携帯音楽プレーヤーの製品イノベーションに関するシーズ的要因とニーズ的要因

製品イノベーションは、シーズ的要因とニーズ的要因の二つの視点から論じることができる。すなわち、携帯音楽プレーヤーに関する下記の製品イノベーションについても、シーズ的要因とニーズ的要因の二つの視点から論じることができる。
 
    radical product innovation 1 携帯型音楽カセットプレーヤーから、携帯型音楽CDプレーヤーへの製品イノベーション
    radical product innovation 2 携帯型音楽CDプレーヤーから、携帯型DAT機器への製品イノベーション
    radical product innovation 3 携帯型DAT機器から、携帯型音楽MDプレーヤーへの製品イノベーション
    radical product innovation 4 携帯型MDプレーヤーから、携帯型メモリタイプ型音楽プレーヤーへの製品イノベーション
    radical product innovation 5 携帯型MDプレーヤーから、携帯HDD型音楽プレーヤーへの製品イノベーション
    radical product innovation 6 携帯型MDプレーヤーから、携帯DVD型音楽プレーヤーへの製品イノベーション

 
上記のようなradical product innovationのシーズ的要因に関しては、「携帯音楽機器の製品イノベーションに関するneedsとseeds-2020ver1」というファイルのように理解することができる。
 
問 「携帯音楽プレーヤーのradical product innovationの1から5までについて、そのニーズ的要因は何か?」ということを下記のような形で考察しなさい。
 
携帯音楽プレーヤーのradical product innovation 6に関わるニーズ的要因
radical product innovation 6に該当する製品は、SONYが2001年に販売開始したDVDウォークマン「D-VM1」である。
同製品は、下記Web1に示唆されているように、「音楽CDを屋外で手軽に聞きたい」「音楽CDを屋外で歩きながら聞きたい」といったそれまでのニーズだけでなく、「音楽ビデオDVDを屋外で手軽に楽しみたい」という新たな潜在的ニーズに応えること、すなわち、市場で広く認識されているわけではないが、「音楽ビデオDVDを屋外で手軽に楽しみたい」という潜在的な必要性(necessity)を充足する一定の有用性(usefulness)を持ったnew productである。
すなわち、同製品は「音楽ビデオを屋外で手軽に楽しむ」ことができるようにすることを目的としたradical product innovationの試みと位置づけることができる。
 しかし下記Web2のグラフに示されているように、「音楽ビデオ」のdemand(需要)は、「音楽CD」のdemand(需要)に比べてかなり限定的なものでしかなかった。
また「音楽CDを屋外で歩きながら聞く」ことは社会的にそれほど不適切な行為ではないが、「音楽ビデオを屋外で歩きながら見る」ことはかなり違和感のある行為であるだけでなく、社会的にかなり不適切な行為である。(そのことは、最近は、「歩きスマホ」禁止が社会的に強く言われていることを考えれば理解できよう。)
 そうした二つの要因により、「DVDウォークマン」に対するdemand(需要)はさほど大きなものとならず、「携帯音楽ビデオプレーヤー市場」あるいは「携帯ビデオプレーヤー市場」の創造に失敗した、と推測される。
 
 
 
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情報公共論第7回目課題-NHK独自の「放送の公共性」に対するレポート作成上の注意

  1. 「NHKが自らをどのような意味で公共放送と規定しているのか?」を調べるとともに、「NHKによるその規定は、NHKの独自性を本当に示しているといえるのかどうか?」「NHKは、NHKの独自性を示している点を本当に満たしているかどうか?」を考察してください。
  2.  
    例えばNHKは下記WEBページでは「電波は国民の共有財産であるということからすると、広い意味では民放も公共性があるということになります」というように民放にも公共性があるとしながらも、「公共放送とは営利を目的とせず、国家の統制からも自立して、公共の福祉のために行う放送」であるというように規定しています。
     
     
    すなわち、NHKによるこうした規定に基づけば、公共放送であるための要素は下記の3つということになります。
     
    1) 非営利性
    2) 国家の統制からの自立
    3) 公共の福祉への寄与
     
    本レポートでは、上記の3つの要素それぞれに関して、下記のことを考察してください。
     
    ポイント1.NHKが本当にそうした要素規定をきちんと満たしているのか?
    例えば、下記のようなことを考察した方がより良いレポートとなります。

    1. NHKは非営利性を強調しているが、NHKが受信者から強制的に徴収している受信料収入は、民放の上位3社のCM放送収入の合計を上回る巨額な金額である。そうした巨大な収入を持つにも関わらず、非営利性を強調することは不適切ではないのか?あるいは、非営利であることにどのような意味があるのか?
    2. 放送業務をおこなっている非営利の組織はNHKだけなのか?
    3. 公共放送を支える資金源である受信料をNHKが独占しているのは適切なのか?NHK以外の放送業務をおこなっている非営利の組織(あるいは、放送業務を新規に開始したいと考えている非営利の組織)に対して、受信料を配分することがなされていないのは適切なのか?
    4. 国家の統制からの自立(の必要性)は、NHK独自のことではなく、民放各局も同じではないのか?また下記の問題にあるように、民放と比べてNHkが特に国家の統制からの自立をしているとは言えないのではないか?
    5. 国家の統制からの自立を強調しているが、NHKの報道は政府・与党からの干渉を受けていると批判されることも多いのではないか?例えば「2017年3月に森友学園問題を取り上げた際には、自殺した近畿財務局の職員にフレームアップしないよう、報道局長が強く求めた」(竹中明洋(2019))とされるし、最近では下記WEB記事のように、NHKの所管官庁である総務省の事務方トップ(「総務次官」)であった鈴木康雄・日本郵政上級副社長によるNHKへの「圧力」が問題になった。(日本郵政には、鈴木氏以外にも、総務省の元幹部が多数在籍している)

    6. 公共の福祉への寄与は、NHK独自のことではなく、民放各局も同じではないのか?また民放は公共の福祉に寄与していないのか?
     
     
  3. NHK独自の「放送の公共性」を問う第7回目課題に関するレポート作成に際しては、下記WEBページおよびOh-o! Meijiの「授業内容・資料」も参照してください。
  4.  
    Oh-o! Meijiの下記WEBページを見る前に、Oh-o! Meijiへのログインを済ませておいてください。そうでないと下記のリンクはうまく機能しません。
     
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Product-out型製品Innovation — 市場調査から出発しない製品イノベーション

Product-out型製品イノベーションは、「製品市場がまだ存在してはいないため、需要(demand)に関する市場調査をおこなえない場合」と、「製品市場は既に存在するが、ターゲットとする顧客の特性が既存市場の顧客の特性とは異なるため、既存市場の顧客を対象とした市場調査が有意味ではない場合」の二つのタイプに分けることができる。
 
タイプ1.それまで存在しなかったまったく新しい画期的な新製品であるために、新製品開発の開始時点ではまだ調査対象とすべき製品市場(Market)が存在しないために需要(demand)に関する市場調査がおこなえない場合
 
タイプ2.「製品市場それ自体は存在するが、既存顧客とは異なる特性を持つ顧客をターゲットとした新製品開発であるため、既存顧客を対象とした需要(demand)に関する市場調査が無意味な場合
 

[考察してみよう]P&Gの下記WEBに挙げられている事例の中には、demandに関する市場調査に基づくものではなく、人々が明瞭には意識してはいないnecessity/usefulnessに関する科学的分析や技術的分析に基づく製品イノベーションがある。そうしたことに該当する事例すべてを挙げ、それぞれの事例がどのようなnecessity/usefulnessに関する製品イノベーションであるのかを個別に考察してみよう。

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市場調査から出発する新製品開発に対する否定的見解

  1. 山内溥(任天堂の3代目社長[1949年-2002年]の発言 — 「市場調査? そんなことしてどうするんですか?」
  2. 市場調査? そんなことしてどうするんですか?――なるほど、その結果に基づいた商品を開発したときは、ユーザーの気持ちは離れているということですね。たしかに、そういったタイムラグという問題もある。でもね、任天堂が市場を創り出すんですよ。調査する必要などどこにもないでしょう。」高橋健ニ(1986)『任天堂商法の秘密――いかにして“子ども心”を掴んだか』祥伝社
     
  3. 井深大(ソニーの創業者)の発言 — 「モノを出すことによって初めて市場調査ができる」
  4. 「市場調査によって新製品を企画するのが米国の常識になっているが、モノを出すことによって初めて市場調査ができる。それ以来、私は『マーケット・クリエーションを伴うものが新しい製品だ。本当の新製品はマーケット・クリエーションがなければならないのだ』ということを強く考えるようになった」ソニー(2009)「Sony Japan | タイムカプセル vol.21 創業者 井深の初夢、正夢となる」
     
  5. 盛田昭夫(ソニーの創業者)のトランジスタラジオに関する発言 — 「まずモノを作って、それがなぜ必要なのかを喚起していく。これがマーケットクリエーションでしょう」
  6. 「私がトランジスタラジオを作り、アメリカに持って行った時は、放送局がたくさんあるから、ゆったり楽しむために家族ひとりひとりがラジオを持つべきだというコンセプトで売ったわけです。ところがアメリカ人は世界で最初にトランジスタラジオを作ったのに、アメリカではでかくて立派なのが家に1台あればいい、こんなもん売れんと諦めた。まずモノを作って、それがなぜ必要なのかを喚起していく。これがマーケットクリエーションでしょう」(『週刊ダイヤモンド』昭和62年6月6日号)[盛田昭夫(1996)『盛田昭夫語録』ソニ-・マガジンズ,p.264]
     
  7. テープレコーダーに関するソニーのWeb上の記述
  8. 『溝を掘って、水を流せ』の言葉通り、こうした普及活動の成果が実を結び、東通工のテープレコーダーは、瞬く間に全国の学校に広まっていった。このことから盛田たちは、本当の市場、最上の市場というのは市場開拓にほかならない。つまり、マーケットクリエーションがいかに企業にとって大事かということを体得していった。」
    [出典]ソニー『Sony History』第3章「テープレコーダーに惚れた男」の第4話「溝を掘って水を流せ」
     
     
  9. マーケットリサーチに頼って商品企画をすると、最大公約数を狙った平凡な商品になってしまう危険性がある
  10. 「「消費者の心の琴線に触れる商品を作ろう」/この言葉は、井深氏、盛田氏はじめソニーの経営トップ、特に大賀典雄氏が常に口にした言葉だった。/”心の琴線に触れる商品作り”とは何か?/それは、マーケットリサーチでお客さまが何を欲しているかを探ることではない。/商品企画にはマーケットリサーチが重要だという考え方がある。しかし、ソニーでは違っていた。/そもそも、マーケットリサーチでどこまで顧客のニーズをつかめるかは、はなはだ疑問だ。マーケットリサーチに頼って商品企画をすると、最大公約数を狙った平凡な商品になってしまう危険性がある。/あくまで、自分たちが欲しい、満足すると思える商品であるかどうかがものづくりの基準であった。」鵜飼明夫(2003)『ソニー流商品企画』H&I,pp.35-36
     
  11. 顧客を裏切る・・・顧客が「欲しいと思っている」モノは、「顧客が真に望んでいるモノ」とは異なることもある
  12. 「まずは綿密な市場調査から。新商品開発の定石は顧客の声に耳を傾けること。企業は購買履歴やインターネットで必死に情報収集する。しかし、念入りに準備してもヒット商品は生み出せない。顧客の声をなぞるだけでは、驚きや感動は与えられない現実。モノが売れない時代こそ、顧客を「裏切る」決意が必要だ。そこから、消費者が真に望む商品が見えてくる。」戸田顕司;宇賀神宰司;吉野次郎;池田信太朗(2007)「ヒット作りの決意 ホンダ、三菱電機、パイロット… 顧客を裏切る」『日経ビジネス』2007年9月10日号,pp.31
     
  13. ホンダのクロスロードの開発責任者の安木茂宏の発言 — 「開発の出発点となるコンセプト作りの段階で、消費者調査をしないことにした」
  14. 安木茂宏(本田技術研究所四輪開発センター 企画室LPL主任研究員)は、「アコード」「シビック」など、ホンダを代表する自動車の開発に長年にわたり携わってきたが、2007年2月発売のクロスロードという新車種の開発責任者として製品コンセプトを決定する際に、消費者調査をしないことを決めたとして「新車種の開発責任者を務めるに当たって、決めたことが1つある。/それは消費者の声に耳を傾けないこと。開発の出発点となるコンセプト作りの段階で、消費者調査をしないことにしたのである。」と述べている。氏は、「コンセプト作りは、とても重要な作業である。デザインや乗り心地、価格、そのほか細かい仕様を決める原点だ。この段階で、顧客に自動車に対する意識や嗜好、改善してほしい点などを綿密に調査することは一般的である。」としながらも、「消費者の声をあえて排除した」製品コンセプト作りを追求した、語っている。[引用出典]「ヒットのタネは「!」 その3 - ホンダ 東芝」『日経ビジネス』2007年09月10日号,pp.38-39
     

    http://kanzaki.sub.jp/archives/002528.html

     

    https://pearand.com/blog/2015/11/16/apple-research/

 
 
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Product-Out型製品におけるDemand認識の後行性

「プロダクト・アウト」型製品の場合には、明確な需要(demand)[注1]が存在しないという状況の中で製品の開発・生産が行われる。すなわち、製品(Product)開発がその製品市場(Market)の存在よりも先行しておこなわれる。
 それゆえ「プロダクト・アウト」型製品の販売に際しては製品開発の終了後にその製品の有用性や有用度をいかに顧客にアピールするかが重要になる。すなわち「プロダクト・アウト」型製品を用いることで顧客のどのような必要性(needs)を満たせるのかや、価格を上回るどのような有用性があるのかなどを明確に示して、その製品を欲求(wants)の対象とする必要がある。

プロダクト・アウト型製品の場合には、

①技術者の技術的シーズに基づく製品の先行的開発
    ↓
②製品の一般的有用度に関する社会的認知の獲得
    ↓
③製品開発前には認識されていなかったneedsに対する認識の形成
[個々の顧客に対する必要性(needs)の存在の認識形成、すなわち、顧客における製品利用法(用途)の開拓と提案・教育]
    ↓
④需要の形成(市場の社会的成立)

といった順で進行する。

 このことをテープレコーダー、メインフレーム・コンピュータ(大型計算機)、パーソナル・コンピュータ、テレビゲームなどの事例に即して詳しく説明していくことにしよう。

  1. ソニーの初期テープレコーダーの場合
    1. 顧客に対する教育を通じた製品販売
         日本ではじめてテープレコーダーを開発・生産したソニーであったが、開発した製品はなかな売れなかった。「その利用法をみんながすでに知っているなら、そうした製品は本当に技術革新的なものとはいえない」のであるから、本当に技術革新的な製品であったテープレコーダーの利用法はほとんどの顧客が知らなかった。
         それゆえ、ソニーから50台のテープレコーダーを仕入れた八雲産業常務の倉橋は、三カ月間、懸命に売りこみを重ねたが、売れたのはたったの1台に過ぎなかった。その後、倉橋と盛田は顧客に対して、テープレコーダーのはっきりとした使い道を示すことで製品販売ができることを「発見」して初めて、製品の普及がはじまった。

          「三カ月間、懸命に売りこみを重ねた結果、倉橋はやっと一台売った。買い手は東京駅に近いおでん屋だった。おでん屋でいっぱい機嫌になった客のなかには、歌を歌いだす者もいる。おでん屋の主人は、そうした歌声を録音し、再生して聞かせた。客は友人や知人を何人もつれてまた店にやってきたし、友人に話して聞かせもするので、おでん屋の主人はこれほどよい客のもてなしはあるまいと考えた。
           その後、倉橋は二台めのセットを名古屋地方裁判所に売った。法廷で使用するためである。責任者は、「主な地方の裁判所はこれをそなえるべきだ。訴訟手続きにかけがえのない働きをしてくれるはずだ」と彼にいった。
           そこで彼は早速、法務省に出かけた。そして、テープ・レコーダーの販売をはじめてから六カ月後に、なんと六十台の注文を得たのであった。これで前途に曙光が見えた。
           法務省から法廷で用いるためにこんなに多くの台数の注文をもらってみると、おでん屋での使われ方が酔狂なものに思われた。倉橋はテープ・レコーダーのはっきりとした使い道をわかっている人でなければ買ってはくれないということをさとった。もしも見込み客にその人にあった利用法を理解してもらえれば、相手はテープ・レコーダーの価値をわかってくれるに違いない。こう考えた彼は、尋問内容を保存するためということで、警察に何台かを売りこんだ。
           一般の消費者を対象とした販売にますますかかわり合うようになっていた盛田は、ある日、たまたまふらりと入った骨茎屋で同じことに気づいた。骨董品、花ぴん、もろそうな磁器、小さな装飾品などさまざまな陶器を見ると、どれもみな、とくによいできだとは思えぬのに、ひどく高い値段がついていた。彼は骨董品にはとりたてて関心もなかったので、別の客が入ってきて、盛田が一文の価値もないと思っていた象牙の小さな彫り物を買い、「すごい掘り出し物だ!」と叫んだのにはびっくりしてしまった。
           あの人はどうして買ったのか? どうしてこんな物に金を出す人がいるのだろう。「日本で最初のテープ・レコーダーを、偉大な技術的な完成品を、貫おうと思えば買えるのに」と盛田は考えた。しかも、その骨董品はテープ・レコーダーより高かったのである。
          「そのときに、販売というものは客が品物に価値を見出さないかぎり成り立たないものだ、と気づいたのです。商品は客の必要の一つを満たさねばならないのです」彼は骨董品を「必要」としなかった。しかし、別の客は明らかに「必要」としていたのだ。では、販売とはなにで成り立っているのか?「売るとは、わたしどもが持っている品物を相手のポケットのなかのお金と交換することだと考えました。しかし、どうやったら客にポケットから金を出させることができるか? スリは金を取り出せる - しかし、わたしどもはスリじゃない」と盛田は語っている。
           東通工の製品の 「科学的な価値」と、それに客が見出す価値は明らかに違う。彼は骨董品の価値を見きわめるための教育は受けていないし、テープ・レコーダ-の価値をほとんどの人は知らない。盛田と倉橋は、利用法について、できるだけ多く学び、そして、大衆に教えていかねばならない、と考えた。教育が必要なのだ。
          「わたしどもは自社の製品の価値を知っていますし、その価値を見込み客に納得させるためには、製品を信頼していなければなりません。わたしどもは、まざれもなく、情報産業にたずさわっているのです」と盛田は語っている。
           この考え方は、その後、根源的な公理として定着した。ソニーは技術革新製品を今後も生産していく。しかし、その利用法をみんながすでに知っているなら、そうした製品は本当に技術革新的なものとはいえない。産業界における独創性は、正しい市場取り引きなくして実を結ばない。販売なくしてはその成果を持続できない。
           東通工は設立当初から、他社のマネをせず、新製品の開拓を社是としていた。いまや東通工は、そうした創造的な技術に常に伴う責任をさらに背負うことを学ばねはならなかった。東通工は、一般大衆に自社の製品より、むしろ自社で開発した新しい考え方を売りこむ必要があった。彼らは大衆に、自らの認識されてもおらず、満たされてもいない要求に日を向けさせる方法を、考え出さねばならなかった。
          [出典]ニック・ライアンズ(中山善之訳,1977)『ソニ-の国際戦略 — ソニ-は市場を“創造”する』講談社,pp.39-41

    2. テープレコーダーの有用性に関する事後的研究
        ソニーは、『テープ式磁気録音 — テープレコーダーとは何か』といったパンフレットを作成するなどテープレコーダーの用途・有用性(needs)を顧客に説明し納得させることから始めた。

          「盛田や倉橋は、これまでの販売方法を省みた。いくら井深や盛田らが技術的興味を持って、新しいものと思って開発しても、お客さまにとって使い方の分からないものは、いくら良いものでも買ってくれないということが分かってきた。そこで、需要を喚起するためにはどうすべきかと、使い方の勉強を始めた。たまたま、アメリカのテープレコーダーに付いてきたパンフレットで『テープレコーダーの999の使い方』という小冊子が手に入った。これは簡単なパンフレットであったため、詳しくは書いてないが、アルファベット順にAなら航空機、Bなら美容院というように、いろいろな使い方が書いてある。盛田と倉橋は、連日これで研究し、テープレコーダーは極めて広い社会層で使えるという確証をつかんでいった」
          [出典]ソニー『Sony History』第3章「テープレコーダーに惚れた男」の第3話「できるまで帰って来るな」
          http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/1-03.html#block8

        1951年3月に発売開始された民生用テープレコーダーの1号機「H型」(重さ13kgで収納ケースは木製でトランク型であった)は、テープレコーダーの使い方の普及・啓蒙活動も一因となり、学校で普及した。
        当時の日本ではアメリカ進駐軍の政策の一環として、「オーディオ・ビジュアル・エデュケーション」すなわち視聴覚教育が推進されていた。そうした教育方法に関するイノベーションの推進手段としてテープレコーダーが使われたのである。
         「テープレコーダーがあれば、それを活用してこのような効果的授業ができる」という事例が積み重ねられていくことで、テープレコーダーは学校の必需品となっていったのである。
         こうしたことは、テープレコーダーという製品(Product)の開発後に、その製品の必要性(needs)=有用性が事後的に発見されたことで製品普及が進んだことを示している。

           その頃、日本では進駐軍の政策の一環として、オーディオ・ビジュアル・エデュケーションということが盛んに言われるようになっていた。オーディオはNHKラジオの教育放送で、ビジュアルのほうは映写機を全国の教育施設に貸し出して、戦前の観念教育から視聴覚教育に切り替えていこうという試みだった。
           その波に東通工も乗ることにした。ラジオの放送は不特定多数の人を対象に、一定の時間流される。これを、音の缶詰にして学校のカリキュラムに合わせれば、本当の学校教育になる。ちょうどタイミングよく、全国で放送教育研究大会が開かれていた。これは文部省とNHKが中心になって、全国の先生方により良い学校放送の指導をしていこうという趣旨で開かれたもので、東通工では、この大会にH型テープレコーダーを貸し出すことにした。東通工は金のない会社だが、井深も盛田もこういうことには理解がある。喜んで何十台も貸し出した。
           一方では、学校放送だけではなしに、もっといろいろな教科にテープレコーダーは使えるのではないか……。倉橋たちは、どうしたら最も有効な使い方ができるかを、文部省や学校の先生方と一緒になって勉強し始めた。そしてしばらく経った頃、倉橋は盛田に呼ばれた。「あなたのやっていることは、大変良いことだ。しかし、ただ勉強しているだけでは惜しい。ひとつ全国を歩いて、今まで勉強してきたことを話してみないか」
           倉橋は、東通工でつくった録音教育研究会の常務理事として、全国の教育の現場で”視聴覚教育のあり方”というテーマで講演をして回ることになった。この会は、財団法人でも何でもない、ただの会だ。実際どの講習会でも、倉橋は東通工のテープレコーダーをお買いくださいとは、ひと言も言わない。単に、視聴覚教育の重要性を説き、その教育上での録音機の使用法を説明し、講演して歩いたに過ぎない。
           この方法が良かったのか、講演の依頼がひっきりなしに続いた。現場から教えられることも結構多い。たとえば、ソロバンの読み上げ算では、均一な授業ができる上、テープレコーダーが読み上げている間、先生は生徒の間を回って指の使い方を指導できる。教室が騒がしく、何度注意しても収まらない時、テープレコーダーにその騷ぎを吹き込んで聴かせたら、一度で静かになったという報告もあった。この後も録音機があれば、これだけ活用できるという事例がたくさん出て、学校の必需品となっていった。H型に続いて、これはもう少し後の時代になるが、7万5,000円のP型が出る頃になると、学校への東通工テープレコーダーの普及は一層の拡大を見せた。
          [出典]ソニー『Sony History』第3章「テープレコーダーに惚れた男」の第4話「溝を掘って水を流せ」
          http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/1-03.html#block10

    3. 新製品に対する需要を待つ前に、新製品の有用性を伝えることが絶対に必要である
           新製品を開発するたびに、まず市場を教育せねばならない。彼らは小学校の教員との会合を主催した。盛田は出席者にテープ・レコーダーの仕組みと最も都合のよいときにNHKの番組を活用するた小学校におけるテープ・レコーダーの利用めの録音の仕方について話した。声の録音の仕方と発音の学習に用いる方法、社会科の教育にいかに役立てうるかということなどを盛田は説明した。
           ものおじしない盛田は、こうした販売説明会で持ち前の才能を存分に発揮した。回を重ねるにつれ、彼のよく響く声は、説得力と熱意を帯びていった。彼は教室でのテープ・レコーダーの使い方を何十も見つけた。物理学者であると同時に、テープそのものの製作に実際に手を貸した彼は、あらゆる部品の機能をすみずみまで把握していた。しかも彼は、生まれつき人をひきつける力をもっており、出席した先生たちの想像力をかきたてた。教室や講堂で実地にやって見せることによって、盛田は新製品に対する需要を待つ前に、新製品の有用性を伝えることが絶対に必要であるということを会得した。
           テープ・レコーダーは売れはじめた。
          「教育は伝達ですよ」と彼はいった。「わたしどもは、わたしどもが持っている知識と情報をできるかぎ。多くの人に伝えなくてはなりません」
          [出典]ニック・ライアンズ(中山善之訳,1977)『ソニ-の国際戦略 — ソニ-は市場を“創造”する』講談社,pp.44-45

    4. 市場創造(Market Creation)の重要性
        テープレコーダーの場合には、製品の開発後に、その製品がどのような場面でどのような有用性を持つのか、どのような事業や作業でどのように活用できるのか、といった製品の用途に関する普及活動が、製品市場を結果的に作り出すことになった。

           『溝を掘って、水を流せ』の言葉通り、こうした普及活動の成果が実を結び、東通工のテープレコーダーは、瞬く間に全国の学校に広まっていった。このことから盛田たちは、本当の市場、最上の市場というのは市場開拓にほかならない。つまり、マーケットクリエーションがいかに企業にとって大事かということを体得していった。
          [出典]ソニー『Sony History』第3章「テープレコーダーに惚れた男」の第4話「溝を掘って水を流せ」
          http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/1-03.html#block10

          [関連参考資料]トランジスタラジオにおける市場創造

            「私がトランジスタラジオを作り、アメリカに持って行った時は、放送局がたくさんあるから、ゆったり楽しむために家族ひとりひとりがラジオを持つべきだというコンセプトで売ったわけです。ところがアメリカ人は世界で最初にトランジスタラジオを作ったのに、アメリカではでかくて立派なのが家に1台あればいい、こんなもん売れんと諦めた。まずモノを作って、それがなぜ必要なのかを喚起していく。これがマーケットクリエーションでしょう」(『週刊ダイヤモンド』昭和62年6月6日号)[盛田昭夫(1996)『盛田昭夫語録』ソニ-・マガジンズ,p.264]

    5. ソニーによるテープレコーダー市場創造(Market Creation)の結果
        ソニーは民生用の普及型テープレコーダーを1951年3月に販売開始している。最初はなかなか売れなかったが、顧客に応じたneeds提案により市場開拓に成功した。needs提案により市場開拓という面ではアメリカ企業よりもソニーの方が進んでいた、とソニーは主張している

          「井深の渡米の目的であるテープレコーダーの市場調査のほうであるが、これに関しては、アメリカでも民生用としては日本ほどの普及を見せていないというのが結論であった。つまり、日本では裁判所から放送局といった業務目的から、学校の学習用に使われ、なおかつ一般家庭にも普及しようかという時期に来ているのに対して、アメリカではいまだ講演の速記とか報道機関のメモ用として使われている程度に過ぎなかったのである。
           実際、日本ほど教育におけるテープレコーダー活用の浸透率が高い国は、世界中見回してもどこにもない。これは、学校に販路を開拓していった東通工の大きな功績であった。学校の授業での活用から始まって、各種のけいこ事に使われ、今日のようにテープレコーダーが普及していったことを考えれば、その市民生活に及ぼした影響の大きさは、計り知れないものがある。」
          [出典]ソニー『Sony History』第4章「テープレコーダーに惚れた男」の第3話「町工場なんかでできるものか」
          http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/1-04.html#block6
     
     
  2. 初代ウォークマン「TPS-L2」の場合
    1. 新聞記者向けの新製品発表会に対する新聞社の対応 — ウォークマンの有用性に対する社会的認知度の低さ
      ウォークマン1号機「TPS-L2」の新製品発表会に対する新聞における取り扱いは冷ややかであり、ほとんど無視という状態であった。

         1979年6月22日。ソニーから「新製品の発表がある」という通知を受けた雑誌記者たちは、東京・銀座のソニービルに集まった。ビルの前にはバスが用意され、バスの中で、彼らの手にヘッドホンの付いた小さなカセットテープレコーダーのような「新製品」そのものが渡された。代々木公園に到着すると、ソニー側からの挨拶の後、「お渡しした機械の再生ボタンを押してください」というアナウンスがあった。ヘッドホンからは、音楽とともに新製品「ウォークマン」の商品説明がステレオで流れた。

        ソニーの初代ウォークマン「TPS-L2」の新製品発表会におけるデモンストレーション
         ヘッドホンの音に集中するマスコミの人たちの前では、「ウォークマン」とプリントされたお揃いのTシャツを着た宣伝部のスタッフやアルバイトの男女学生が、ウォークマンを思い思いに楽しむデモンストレーションを続ける。
         ヘッドホンから声が流れる。「ご覧ください。若い2人はタンデム(2人乗り自転車)に乗ってウォークマンを楽しんでいます」。記者の目の前を、ウォークマンを付けた男女の若者がタンデムに乗って楽しそうに走り抜けて行く。

        プレス発表の日、記者たちの前でデモンストレーション
         記者たちは、新製品の概要を知ると同時に、実際にヘッドホンから流れる音を聴き、目でも確かめていた。“ウォークマン”「TPS-L2」。ヘッドホン再生専用、手のひらサイズのステレオカセットプレーヤーで価格は3万3000円。いつでも、どこでも、自分の好きな音楽を、ステレオで好きなだけ楽しめるという。

         ヘッドホンを外してみれば、何のアナウンスも聞こえない静かな発表会だった。記者たちは、この変わった新製品発表会の「意外性」に、驚きの表情を見せていた。

         しかし、マスコミ紙面の反応は冷ややかだった。新聞はほとんど無視、載せても本当に申し訳程度の記事である。7月1日に予定どおり発売したものの、7月が終わってみると、売れたのはたったの3000台程度だった。「やはり、駄目なのか……」
        [出典]
        ソニー株式会社『Sony History』第6章「理屈をこねる前にやってみよう」
        http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/2-06.html#block5


    2. 顧客に実際に体験してもらうことによるウォークマンの有用性に対する社会的認知の形成
      — 「この商品は、まず聴いてもらって良さを分かってもらわないと、話が始まらない」 —

    3. ロジャースのイノベーション普及理論における「イノベーター」or「オピニオンリーダー」としての丸井の購買担当者
         こうなるのを早くから、もしかすると盛田以上に見抜いていたかもしれない人たちがいた。それは、デパートの「丸井」の若い購買担当者たちだ。彼らは、ウォークマンが、秋葉原辺りの量販店、特約店、ひいてはソニーの営業サイドにさえ、半ばそっぽを向かれていた頃、「これは絶対に売れるよ」と言い切り、1万台の注文を出していた。丸井では若い担当者たちに責任と権限が与えられていた。彼らは、若い感性で「絶対いける」と確信を持っていたのである。
        [出典]
        ソニー株式会社『Sony History』第6章「理屈をこねる前にやってみよう」
        http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/2-06.html#block5
     
     
  3. メインフレーム・コンピュータ(大型計算機)の場合
    1. メインフレーム・コンピュータの革新的有用性に関する社会的認知
        メインフレーム・コンピュータの製品開発に必要とされる技術開発は遅くとも1940年代後半期には基本的には終了していた。製品生産にあたっての主要な問題は、製品生産に必要な資金調達や製品に対する需要の不明確さであった。製品開発作業が基本的には終了したとしても、製品生産に必要な資金がなければ生産開始できないし、当該製品に対する需要がなければ生産を開始しても意味がない。
         メインフレーム・コンピュータのようなプロダクト・アウト型製品で、なおかつ巨額の製造コストがかかるために販売価格も高額な製品の場合には、その製品をとりあえずまず顧客の欲求(wants)の対象とさせることが販売に至るまでの第1歩である。
         この点に関してメインフレーム・コンピュータは、アメリカ大統領選挙における当選者予測に関する下記のようなエピソードで広く社会的認知を得ることに成功し、その後の製品販売につながったとされている。

        1952年のアメリカ大統領選挙の一部投票データに基づく勝利者予測の劇的成功による社会的認知の獲得

          資料1>ワトソン・ジュニア『IBMの息子』新潮社,下巻,pp.10-11

            ユニヴァックがIBMを何年分もリードしていることを、われわれは承知していた。なお始末の悪いことに、レミントン・ランド社は着々と妙手を打っているようだった。アイゼンハワーがアドレイ・スティーヴンソンを破ろうとしていた一九五二年の大統領選挙の投票日、なんとCBSテレビにユニヴァックが登場したのである。CBSは選挙結果の予想にユニヴァックを使用することに同意したのだ。かくしてユニヴァックは、エドワード・R・マロウ、エリック・スプアリード、ウォルター・クロンカイトといったキャスターらによって、数百万の視聴者に紹介されたのだった。クロンカイトはそれを、〝あの驚くべき電子頭脳”と呼んだ。しかも、その〝電子頭脳”は完璧に機能した - あまりにも見事に働いたので、立ち合っているエンジニアですら、それが打ち出した予想を前にして頬をつねったくらいだった。
             選挙前の各種の世論調査では接戦が予想されていたのに対し、ユニヴァックは、ほんの一部のデータのみに基づいてアイゼンハワーの大勝を予言したのである。レミントン・ランドの連中はかえって不安になり、ユニヴァックの記憶装置の一部を外して、世論調査に近い結果がでるように細工した。ところが、結果は最初ユニヴァックが予想した通りだった。その晩、テレビにはユニヴァックのエンジニアが登場し、彼が施した細工を面目なさげに告白したのだった。いずれにせよ、レミントン・ランドのコンピューターがこの選挙を機に満天下に知れわたったことはまちがいない。その結果、我が社の最初のコンピューターが登場したとき、世間ではそれを〝IBMのユニヴァック”と呼んだのだった。
            トーマス・J. ワトソン・ジュニア(高見浩訳1991)『IBMの息子 ; トーマス・J. ワトソン・ジュニア自伝』新潮社,下巻,pp.10-11

           

          資料2>M.ケリー、W.アスプレイ(1999)『コンピュータ200年史』海文堂出版,pp.121-123

            1952年の終わりに,レミントン・ランドは,UNIVACの一大宣伝デモンストレーションを敢行した。UNIVACを使って大統領選の結果予測をすることを,CBSテレビ・ネットに説得したのである。選挙の数カ月前にジョン・モークリーは,ペンシルペニア大学の統計学者の助けを借りて,1944年と1948年の選挙投票パターンをベースに,いくつかの主要州の初期の開票データから最終結果を予測するプログラムを作り上げた。
             投票日の夜,現場レポーター,チャールズ・コリングウッドと共に,何台ものCBSのカメラがフィラデルフィアのUNIVACビルに設置された。CBS本社では,ウォルター・クロンカイトがアンカーマンをつとめ,スタジオには本物らしく見せるためダミーのUNⅣACコンソールまで設置された。コンソールでは無数のランプがチカチカまたたき,まさに効果満点だった。もっとも実をいうと,これはクリスマス・ツリーの飾りランプと同じような仕掛けにすぎなかった。
             UNIVACは,最初の予想を午後8時30分に[以下のように]打ち出した。

            まだいかにも早すぎるが,そこを敢えて
            -3,398,745票をもとに-
            UNIVACが予想すると

            ステイーブンソン アイゼンハワー
            5 43
            選挙人 93 438
            一般 18,986,436 32,915,049

                    となり,現在のところ00対1でアイゼンハワーが有利。

             UNIVACはアイゼンハワーの地滑り的な勝利を予言していた —- 前日のギャラップとローバーの世論調査が競り合いを予想したのとは完全に対照的だった。UNIVACチームの1人は,このときの模様を次のように回想している。
             我々の選挙担当者たちは信じられないといった面持ちをした。コンピューターはアイゼンハワーの地滑り的大勝利を予言したのである。アイゼンハワーの勝率は,コンピューターにプログラムしておいた2桁の数を上回っていた。だからプリントアウトには100:1ではなく,00:1と出たのだ。彼らは額を寄せ合って相談し,それから「こんな数字を発表するわけにはいかない。リスクが大きすぎる」と言った。こんなに少ない票数をもとに,確率が100:1以上だと予想する精度をこの機械が持つことなどは,彼らの理解を超えていた。
             UNIVACのオペレーターは大急ぎでプログラムのパラメーターを修正し,もつと信じられそうな数字を出すようにした。午後9時15分に最初に放送されたUNIVACの予想は,アイゼンハワーが8対7で勝つだろうという穏当なものになった。だが夜が更けるにつれ,まさに地滑り現象が起きているのは明白になった。UNIVACのスポークスマンは後でテレビに出演し,UNIVACが出したオリジナルな予想を隠したことを告白した。選挙人獲得数の最終結果は,アイゼンハワー442対,スティーブンソン89となった。UMVACの最初の予想,438対93に比べて紙一重の違いしかなかった。
             UNIVACのプログラマーやレミントン・ランドのマネージャーたちが最初の予想を抑えたことを大いに悔やんだのはもちろんである。だがコンピューターの無謬性をこれ以上はっきり示すPRはなかった。あるいはむしろUNIVACの,といったほうがいいかもしれない。なぜならUNIVACという名前が急速にコンピューターを指す代名詞になっていったからだ。選挙の夜のUNIVACの出現は,コンピューター史に残る重要な瞬間であった。その日以前は,コンピューターのことを知る人はごく少数だったし,実際に見たことのある人はもっと少なかった。その日以降は,誰もがコンピューターというものを知っていて,少なくともその実物大模型を目にしたことがあった。かくしてコンピューターのことを人々はUNIVACと呼ぶようになった。IBMとは誰も呼ばなかった。」M.ケリー、W.アスプレイ(1999)『コンピュータ200年史』海文堂出版,pp.121-123

    2. メインフレーム・コンピュータの用途を教えることができる人材の新規採用、および、セールスマンと顧客に対する教育
         当然のことながら、上記のように社会的認知に成功しただけで、実際に製品が順調に売れるようになり、当該製品に対応する市場(market)が社会的に成立するようになるわけではない。
         それまで存在しなかったになかった極めてラジカルな製品イノベーションを成し遂げたプロダクト・アウト型製品の場合には、その製品の使用法や利用法をいかに顧客にアピールするかが次の重要なステップである。顧客に「おもしろい」と思わせるだけでなく、「買いたい」と決断させることが次に必要なステップである。
         極めてラジカルな製品イノベーションであるために製品の使用法も用途も一般に知られていない製品の場合には、顧客に対して製品(product)によるneeds充足の仕方を教育して、製品(product)をwantsの対象とさせる必要がある。そのため、販売員だけでなく、顧客への教育も重要な販売促進手段となる。

          「IBMにおいては、・・・はコンピューターの新機種が発表されると同時に、持てる販売力のすべてを動員した。もちろん、最初のうち、セールスマンはコンピューターについて何も知らなかったので、豊富な知識を持っている経営幹部やエンジニアがいつでも彼らの手助けができるような態勢を整えた。また、新機種が引きわたされる数か月前に、数学科や物理学科の大学卒業生を何十人も雇って、顧客たちがコンピューターの用途を決めるさいのアドヴァイザ一にさせた。それだけではない。この新しい分野の知識を広めるために、われわれは顧客とセールスマン双方を対象に、ポーキプシーでセミナーをひらいたのだった。
           IBMの歴史をひもといてみると、われわれを成功に導いたのは、必ずしもテクノロジーの優位性だけではなかったと言える。残念ながら、技術革新の面で他社に先を越されたことは何度もあったのである。だが、結果的に見ると、肝心なのはテクノロジーよりもむしろセールスや流通の方法論だった。ユニヴアックにはじまって、こちらより優秀なテクノロジーを有するライヴァル会社を、販売面においてわれわれが一貫して圧倒してきたのは、いくつかの重要なノウハウをこちらが心得ていたからなのだ。たとえば、新機種の用途を顧客にいかに要領よく説明するか。その新機種をいかに手際よく据えつけるか。そして、一度つかまえた顧客をいかに末永くこちら側に引き留めるか。
           われわれのセールス・アプローチの核心は、かつて父が穿孔カードで成功し得たのと同じ要素、すなわち、システムに関する情報、であった。IBMが何かを独占していたとすれば、まさしくそこにおいてなのである。われわれに匹敵するほどの関心をその点に払ったライヴァル企業は、一つとしてない。レミントン・ランドですら例外ではなかった。ランド社の場合は、我が社と同じく穿孔カード機を扱った経験も長かったのだから、当然、そのへんの機微は心得ていて当然だったと思われるのだが。」
          トーマス・J. ワトソン・ジュニア(高見浩訳1991)『IBMの息子 ; トーマス・J. ワトソン・ジュニア自伝』新潮社,下巻,pp.29-30
     
     
  4. パーソナル・コンピュータの場合
    1. エバンジェリスト(evangelist)の活用
      レミントンランド社やIBMが1950年代初頭にメインフレーム・コンピュータの販売促進のために取った上記のような手法は、パソコン業界においてもよく用いられている。
       たとえば、Apple社がパソコン販売に際して、またマイクロソフト社がソフト販売に際して、エバンジェリスト(evangelist )により自社製品の優秀性を顧客に強力にアピールするとか、教育コストを製造メーカーに代わって負担してくれる教育機関にディスカウント価格で強力に売り込むといった販売手法はよく用いられてきたし、現在でも用いられている。

      関連参考資料>

      1. 古川亨(2005)「ジョブズの右腕として、世界初のエバンジェリストと呼ばれた男」
        http://furukawablog.spaces.live.com/blog/cns!156823E649BD3714!2351.entry?_c=BlogPart

          マイク・ミューレィ(Mike Murray)は、マッキントッシュの魅力を製品発表前に一人でも多くの人に理解してもらおうと、時にはスティーブ・ジョブズと一緒になって、アメリカのセレブたち — マドンナ、ローリング・ストーンズのミック・ジャガー、その他ジャーナリスト、政治家、テレビの司会者、各種業界の重鎮たち — に対して、試作品のMacを抱えながら「啓蒙」の旅に出た、と言われている[注2]。そうしたマイク・ミューレィの活動を宗教の福音伝道活動になぞらえて、エバンジェリズムと定義し、その伝道師をエバンジェリストと呼ぶようになった、と言われている。

      2. 織田 浩一(2005)「AD:TECH 2005 NY 基調講演「Selling the Digital Dream」—デジタルマーケットのエバンジェリストとなるための10カ条;Garage Technorogy Venture マネージングディレクター Guy Kawasaki氏」2005/11/09
        http://weblogs.nikkeibp.co.jp/adtech2005_ny/2005/11/selling_the_dig_32ae.html

          エバンジェリストの仕事は「ブランド認知をつくることや、マーケットシェアを伸ばすことではない。消費者にとって「意味のあるもの」をつくることである。」というのがGuy Kawasaki氏の主張

      3. マイクロソフト株式会社(2006)「「難解技術を分かりやすく伝道する」マイクロソフトのエバンジェリスト」
        http://www.atmarkit.co.jp/ad/ms/evangelist0607/evangelist01.html
        http://www.atmarkit.co.jp/ad/ms/evangelist0607/evangelist02.html

      4. 日本IBM(2008)「IBM ソフトウェア・エバンジェリスト」
        http://www.ibm.com/developerworks/jp/evangelist/

          「先進技術でもってお客様のビジネスにおけるイノベーションをリードする技術エキスパートとしてのエバンジェリスト

      5. 垣内郁栄(2004)「男女9人IBMエバンジェリスト物語」『アットマーク・アイティ NewsInsight』2004/5/12
        http://www.atmarkit.co.jp/news/200405/12/ibm.html

          「IBMのテクノロジのセールスマンではなく、テクロノロジの預言者、ベストの解を見つけるのが役割」としてのエバンジェリスト

    2. ユーザー教育の場の設定

      1. ユーザー教育の場としてのNECのBit-INN東京(1976年に秋葉原に開設)
         NECは完成品のパソコン販売に先立って、TK-80というキット型ハードウェア製品をトレーニング・キット(Traingin Kitなので、商品名がTKとなっている)として販売しマイコンブームを引き起こした。
         NECが秋葉原に開設したBit-In(ビットイン)には、TK-80がもともとのターゲットとしていたエンジニアだけでなく、学生をはじめとして様々な人たちが続々とつめかけた。パソコン市場の立ち上げに、NECのBit-Inは大きな影響を与えたのである。

        関連参考資料>

        1. NEC「1979年 パーソナルコンピュータ PC-8000シリーズを発売 ~「パソコン」の誕生~」
          http://www.nec.co.jp/profile/empower/history/1979.html

        2. 大河原克行(2000)「大河原克行の「秋葉原百景」— パソコン発祥の地がアキバから消えた」
          http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/20011112/akibah02.htm

        3. 毎日コミュニケーションズ(2001)「NEC 旧・Bit-INN東京に「PC発祥の地」プレート設置」『マイコミジャーナル』(毎日コミュニケーションズ)2001/09/28
          http://journal.mycom.co.jp/news/2001/09/28/13.html

     
     
  5. テレビ・ゲームの場合
    1. 株式会社エポック社で「テレビ野球ゲーム」(1978年)から「スーパーカセットビジョン」(1984年/15,000円)までの開発に携われた堀江正幸氏の証言
        エポック社は、1975年に国産初の家庭用ビデオゲーム「テレビテニス」(定価19,500円)を出した会社である。エポック社が出した1980年代前半までのテレビゲーム機は下表の通りである。
       
      商品名 価格 備考1 備考2
      テレビテニス(TVTENNIS) 1975 19,500 1975年に発売された国産初の家庭用ビデオゲーム 白黒ポンテニスゲームの専用機であった。
      システム10 1978 NECとの共同開発製品、ハードウェアはまだLSIが使われておらずワイヤーロジックで作られていた。ピンポン、テニス、光線銃ゲームなど10種類のゲームを内蔵。任天堂のファミコン発売前の製品として、ゲーム機の画面出力に家庭用テレビを使う先駆け的製品であり、同市場におけるパイオニアとしてユーザー教育など「先駆者のコスト」負担が大変であった
      テレビ野球ゲーム 1978 野球盤という玩具で有名なエポック社が出したテレビ野球ゲーム
      デジコム9(LSIゲーム) 1979年頃
      カセットTVゲーム 1979 57,300 アタリのVCS(1977年;Video Computer System 、それ以前のゲーム機はプログラム固定方式であったが、ロムカートリッジを取り替えることによって様々なゲームソフトが遊べるプログラム内蔵方式のゲーム機)をエポック社が輸入して販売したもの。高価であったが、その当時に家庭で本格的インベーダーがプレイできたのはこのマシンだけであった。
      テレビベーダー 1980 16,500 インベーダーゲームを家庭用にコンパクトにまとめたもの。大ヒットした
      カセットビジョン 1981 13,500 ポンテニス、エレベーターパニックなど初期の複数のテレビゲームをこれ一台で楽しむことができる
      スーパーカセットビジョン 1984 15,000 128枚の強力なスプライト機能搭載。ルパン三世やスタースピーダーなどユニークなゲームが多数あった。
       
        エポック社は、1978年にシステム10という製品を発売したが、テレビゲーム機というジャンルの製品そのものに業界も、顧客もほとんどなじみがなかった。そのため最初は顧客への啓蒙活動やサポートが大変であった。
        堀江氏はそのことに関して、「業界も、うちの会社も、お客さんもそうだったんですけど、家庭用テレビゲームをテレビにくっつけるって文化がなかったわけですよ。今はビデオ端子があって、少し前はスイッチボックスってのがあって、あれにつなげればいいってのはみんなわかってますよね。あとチューニングも2chにすれば映るとか。でも、そういう最初の頃は、画面がうつらないという苦情が毎日のようにかかってきたんです。
        だから、うちの果たした役割というのは、任天堂さんのファミコンが出る前だったから、露払いなんですね。すごい啓蒙活動をしたんですよ。その頃私は大阪の営業所にいたんですけど、もう、ダメだったらほとんどお客さんの家までとんで行きましたよ。電話での説明は難しいので。営業所(大阪)から和歌山くらいまで。関西の方は親切な人が多くて、電話の時は「わ、恐いなー」と思っていても、いろいろごちそうしてくださったり。ビールや夕飯までごちそうになってしまって(笑)。
        昔のテレビって画面の範囲がせまいんですね、画面の角が丸くて、だからゲーム画面が全部入ってないとか、そんなことが多かったんです。水平振幅や垂直振幅の調整までやってあげちゃうわけですよ。後ろに回って掃除機かかえてほこり取ってあげたり、曲がってたりしたら直して。」と証言している。

        [出典]寺町電人(1998)「先駆者に聞く創世の時代 Game Frontiers interview01 エポック社 堀江正幸氏に対するインタビュー」『クラシックビデオゲームステーション オデッセィ』
        http://www.ne.jp/asahi/cvs/odyssey/creators/horie/index.html

[注1] 需要(demand)が明確かどうかという問題は、新製品に対する需要(demand)予測が根拠を持ってどの程度まで正確に予測できるのかという問題である。潜在的な需要(potential demand)であれ、すでに存在する顕在的な需要であれ、当該種類の製品に対する需要の存在が社会的に明確に認識されている場合には、ある程度の正確な需要予測が可能な中で新製品開発が行われることになる。
 こうした場合の新製品開発は、テクノロジー・プッシュ(Technology Push)/プロダクト・アウト(Product Out)型ではなく、デマンド・プル(Demand Pull)/マーケット・イン(Market In)型として位置づけられることになる。
 企業が同一の顧客層を対象としてイノベーションをおこなう場合、すなわち、クリステンセン的な意味での持続的イノベーションの場合には、需要予測は比較的正確におこなえる。クリステンセン『イノベーションのジレンマ』第7章「持続的技術と破壊的技術の市場予測」pp.198-201の図7.1などを参照のこと。
[注2] これと同様のことは、ソニーの初代ウォークマンの場合にも行われた。本Webページ内の該当箇所を参照のこと。

[作成者]佐野正博 First draft:May 9, 2009

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放送の公共性

     
    「朝日新聞」記事(1985年1月~2006年9月)、「読売新聞」記事情報(1986年9月~2006年9月)および「毎日新聞」記事(1987年1月~2006年9月)で下記のキーワードを含む記事を検索し、「放送の公共性」ということが新聞記事においてどのように取り扱われているのかを分析した論考。

    1. 放送の公共性
    2. 「放送」AND「公共性」
    3. 「公共放送」
    4. 「公共性」

    本論稿によれば、公共性という単語は下記のようなニュアンスを持つ言葉として新聞記事で使用されている。

    1. 「安全・快適な社会生活を営む上でなくてはならぬもの」=「みんなの役に立つこと」「公衆の利益に役立つこと」(公益性)
    2. 「誰にでも利用機会のあるサービスに関して、市場原理に任せて金儲け・利益追求の対象とするのではなく、安価に提供できるようにすること」(ユニバーサリティ、非商業性)
    3. 「高い質を持ったサービスを提供すること」(視聴率が取れるエンターテインメント中心の番組編成をしないこと、ジャーナリズム精神あふれる番組や文化的な番組を提供すること)(社会における文化の昂揚、文化水準の向上)
    4. 「放送に関するアカウンタビリティ(説明責任)を確保すること」(アカウンタビリティ)
    5. 「特定の主義主張や政治的立場に与しないこと」(不偏不党性)
     
    「公共性」という日本語の単語が英語やドイツ語でどのような単語に対応するかを通じて、「放送の公共性」を考察した論考。
    著者は、「日本語の「公共性」は,この60年余りの間に,まことに正体のハッキリしないものになってしまった」にもかかわらず、「その「公共性」を錦の御旗にして放送事業を掌る人々の自己正当化が行われている」ことが問題だとし、「現在,日本で「公共性」として理解されているすべてをこの一語に包含し続けるよりは,「公共(的)――」というように,もう一つの名詞を添えて,概念の具体化を図ることが望ましい。それらの新しい概念は,人によって理解の食い違いを生まないような,明確なものでなければならない。」と主張している。

    1. public interest
    2. public responsibility
    3. public service
    4. Öffentlichkeit
    5. Grundversorgung と Funktionsauftrag
    6. publicness
     
     
     
     
     
    YouTube、Netflix、Amazon Primeなどのサービスの普及が示唆するように、動画視聴が従来のライブ視聴型(ライブ配信型)からオンデマンド型へと移行しつつある。そうした中で「放送の公共性」の意義も変わりつつある。すなわち、YouTube、Netflix、Amazon Primeなどオンデマンド型動画配信サービスは、「パーソナル化による視聴者の断片化」を進めるものであるとともに、「グローバルなメディアマーケットでの利益追求」を求めるものである。しかしそうしたことの進行は、公共放送がこれまで担ってきた「社会で共有する体験や知識を提供する」という機能の低下をもたらすものでもある。

    OTTは、Over The Topの略語で、「動画・音声などのコンテンツ・サービスを提供する事業者、もしくはそれらコンテンツ・サービスそのもの」を指す。Zoomなどのオンライン会議サービス、YouTube、Netflix、Amazon Primeなどの動画配信サービス、音声通話やメッセンジャー機能を備えたLINE、Skypeなど、「インターネットサービスプロバイダ(ISP)や通信事業者とは関係のない企業が運営し、特に大量のデータ通信が発生するサービス」をOTTと呼ぶことが多い。参考資料:『KDDI用語集』

     

    https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/oversea/036.html
    https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2006_03/060302.pdf

    よく言われることであるが、公共放送の特徴として、「政治・企業(商業主義)からの独立」、「すべての視聴者への奉仕」、「国民生活に関連する基本的情報の伝達」、「番組の質の高さ」、「受信料(支払金額)の適切性」などを挙げている。

    https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/focus/070.html

    https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/domestic/051.html
    「最近、自主放送のコミュニティチャンネルをめぐって、公共性を問われる問題が相次いでいる。都内のケーブルテレビでは、市民が制作しコミニュティチャンネルで放送された番組が政治的公平性に問題があるとして、総務省から行政指導を受けた。」といったことを取り上げている。

    https://www.nhk.or.jp/bunken/book/media/pdf/2016_32.pdf
    ソーシャルメディアの公共性(pp.243-244)など、「放送の公共性」に関わる周辺的問題が論じられている。

カテゴリー: 佐野ゼミ生用課題, 公共性, 学問的考察, 放送 | コメントする

ニーズ概念に関する経営技術論的分析

ニーズ(needs)という単語は、下記に列挙するように、経営学的に区別すべき3つの位相を持っている。
 
位相1.必要性(necessity)・有用性(usefulness) —- 「必要とする」「役に立つ」
位相2. 欲求(wants) — 「欲しい」
位相3. 需要(demand) — 「購入する」
 
例えば、水に対する「ニーズ」というのは下記のような3つの位相を持っている。
 
位相1.水分摂取の必要性(necessity)・有用性(usefulness)
ヒトは生きていくために水分を摂取する必要がある。成人の体の60%は水分であり、尿や汗などとして1日当たり約2リットルから2.5リットルの水分が体外に排出される。その排出分を食物や飲料水で補給する必要がある。排出に対応する量をきちんと摂取することは、スポーツ中の熱中症防止や脳梗塞・心筋梗塞のリスク低下など健康維持に役にたつ
 
位相2.「のどの渇き」という水に対する欲求(wants)
ヒトは水分が不足すると、のどの渇きを感じる。すなわち水を飲みたいという欲求が生じる
 
位相3.水製品に対する需要(demand)
水を飲みたいという欲求を充足する製品(商品)は数多く存在する。最も低価格なのは水道水である。水道水をおいしくないと感じる人や、水道水に不安を感じる人は、ペットボトル入りのミネラルウォーター、天然水、深層水などの水を購入する清涼飲料水に対する需要は長期的には増加傾向にある。例えば、一人当たりのミネラルウォーターの消費量は、1997年には年間6.3リットルであったが、2014年には25.7リットルと約4倍にもなっている。
 
 
[参考資料]

  1. おいしい水研究会(1985)「おいしい水について」『水道協会雑誌』54(5) pp.76-83
  2. https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/05000952/05000952_003_BUP_0.pdf,

    日本ミネラルウォーター協会-2015-ミネラルウォーターの1人当り消費量の推移
 
ニーズ概念に関するコトラー的理解と経営技術論的理解の差異と連関
普通の人々は、水分摂取の必要性(necessity)・有用性(usefulness)といった人間的生命活動の維持に関わる基本的な生理学的必要性・有用性を意識・認識していないことはない。それゆえ水分摂取の場合のような必要性(necessity)・有用性(usefulness)に関しては、「客観的規定としての水分摂取の必要性(necessity)・有用性(usefulness)」と、「客観的規定としての水分摂取の必要性(necessity)・有用性(usefulness)に関する人間の意識・認識」の区別をことさら問題にする必要性・有用性はない。その限りにおいてコトラー的理解でも問題はない。
 しかし脚気などに示されているように、病気治療に関わる必要性(necessity)・有用性(usefulness)に関しては、病気治療に関わる必要性(necessity)・有用性(usefulness)に関する科学者による「科学」的認識(病気発生メカニズムに関する科学的「発見」)、薬学者・新薬メーカーによる治療薬の「発明」および臨床医学者による医療行為(医療の「生産」行為)の要素としての「薬理学」的認識・「臨床医学」的認識と、患者など一般の人々の「日常」的認識の間にはズレがあるのが一般的である。
 そうしたズレの説明のためには、「客観的規定としての必要性(necessity)・有用性(usefulness)」と、「客観的規定としての水分摂取の必要性(necessity)・有用性(usefulness)に関する人間の意識・認識」の区別と連関の把握が必要不可欠である。
 
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任天堂DS

任天堂がニンテンドー DS(2004)というProduct Innovationを推し進めた意図・目的・手法・結果に関して、任天堂の有価証券報告書における記述、および、ニンテンドー DS(2004)の開発・販売当時の任天堂社長の岩田聡の発言を引用しながら、説明しなさい。
 
ただしその際に、下記に挙げた参考資料から3点以上を引用しなさい。
 
[参考資料]
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佐野ゼミ2020年度2次入室試験

佐野ゼミでは2020年度2次入室試験において、「志望動機」および「課題レポート」の提出を求めています。
なお応募者人数によっては、提出物に基づいてZoomによるオンライン面接を実施します。「志望動機」および「課題レポート」の提出とともに、「Zoomオンライン面接アンケート」への回答を必ずお願いします。Zoomによるオンライン面接を実施する場合には、Oh-o! Meijiの「お知らせ」機能を使って別途個別に連絡をします。
 
下記ファイルに、「Zoomオンライン面接アンケート」への回答、および、「志望動機」(文字数自由)を記載した後、下記に記載した課題に対するレポートを続けて書いてください。
 
- 以下、佐野ゼミ2020年度2次入室試験のための課題 -
 
本WEBサイト内の下記WEBページに記載された問題の内のどれか一つを選択して、レポートを作成しなさい。なお下記のWEBページの中には複数の問題が記載されているものがありますが、レポート作成に際してはどれか一つだけを取り上げて書いて下さい。(字数は自由です)

  1. Amazon.com – ジェフ・ベゾスは、amazon.com起業時にネット販売の対象としてなぜ最初に本を選択したのか?
    https://sanosemi.info/archives/3447

  2. 自動車の自動運転というイノベーション
    https://sanosemi.info/archives/3804

  3. Facebook, Inc.のInnovationおよびFacebook, Inc.関連財務データ
    https://sanosemi.info/archives/4071

  4. 製品イノベーションの構造に関する needs,wants,demand視点からの考察
    https://sanosemi.info/archives/4143

  5. カラーテレビの普及
    https://sanosemi.info/archives/4145

  6. 任天堂DS
    https://sanosemi.info/archives/4281

  7. アナログカメラからデジタルカメラへの製品イノベーションの社会的普及のあり方に関するゼミ課題
    http://sanosemi.info/archives/3243
 
 
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行政の情報化イノベーション

  1. 日本政府によるICT利用による社会的イノベーションの推進論
  2. IoT(Internet of Things)、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータ等の新たな技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れてイノベーションを創出し、一人一人のニーズに合わせる形で社会的課題を解決する新たな社会を「Society 5.0(ソサエテイ 5.0)」と名付けました。この概念は、平成28年1月に策定された第5期科学技術基本計画において初めて提唱され、日本は世界に先駆けて新たな社会の実現を目指していきます。
    特集テーマ「進化するデジタル経済とその先にある Society 5.0」
    第3章「ICT分野の基本データ」第2節「ICTサービスの利用動向」の6「行政情報化の推進」(pp.290-292)の中で、「電子行政の推進:行政手続等の棚卸に基づく電子行政の推進状況」(pp.290-291)と「地方情報化の推進」(オンライン利用状況、業務システムの効率化)(pp.291-292)が取り上げられている。
     
     
  3. ドイツのICT利用による「第4次産業革命」論(Industrie 4.0)関係
  4.  
  5. 行政の情報化(電子行政)
  6. 内閣府「公共サービスイノベーション・ウェブサイト」
    内閣府ホーム  >  内閣府の政策  >  経済財政政策  >  経済財政諮問会議  >  専門調査会情報等  >  経済・財政一体改革推進委員会
    「公共サービスイノベーション」とは、1公共サービスに対する需要・供給構造に関する情報や地域間、保険者間の差異に関する情報等の「見える化」を進めること、2公共サービスに係る業務の簡素化・標準化、先進的な取組の普及・展開を進めること、を目指す考え方です。この考え方は、経済再生と財政健全化の双方を推進する上で、「公的サービスの産業化」、「インセンティブ改革」と並ぶ歳出改革のアプローチの一つとして、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太方針2015)で策定された「経済・財政再生計画」において提示されました。
     
  7. 電子政府の総合窓口
  8. https://www.e-gov.go.jp/

    <電子政府>化は、「行政分野へのIT(情報通信技術)の活用とこれに併せた業務や制度の見直しにより、国民の利便性の向上と行政運営の簡素化、効率化、信頼性及び透明性の向上を図ること」を目的としたものです。これにより、「利用者本位で、透明性が高く、効率的で、安全な行政サービスの提供」「行政内部の業務・システムの最適化(効率化・合理化)」を実現しようという計画である。(『電子政府構築計画』の「基本的考え方」https://web.archive.org/web/20031002051318/http://www.e-gov.go.jp/doc/00-2kangaekata.pdf,p.1)

     
  9. 電子自治体関連資料
  10.  
  11. 関連サイト
    1. 電子行政ニュースインタビュー記事電子行政関連キーワード、地方自治体の情報化統括責任者(CIO)のフォーラム関連記事[都道府県CIOフォーラム政令市・中核市・特別区CIOフォーラム]を読むことができる。
      自治体ICTに関するトピック、法改正の影響、地域の課題解決への取り組みなどを紹介しているサイト。
      下記のような興味深い記事がある。
       
      また以前には下記のような「スペシャルインタビュー 」などが掲載されていた。
      2004年7月に発表された「e-Japan戦略II」では、ITの利活用拡大が大きな目標となった。その推進役である電子政府、電子自治体分野も法整備・インフラ整備が進む中で第二ステップを迎え、より利用者本位の安全で使い勝手のよい行政サービスや、行政内部の最適化が求められています。
      本特集は、そうした電子政府、電子自治体の現状と今後の計画を整理するとともに、日立の最新の取り組みを紹介している。

      「Pick up 自治体」「イベントレポート」「電子行政用語集」などのコーナーが有用である。

  12. 電子行政関連用語
  13. IT国家、ミレニアム・プロジェクト 、IT国民運動 、情報通信技術(IT)戦略本部IT戦略会議IT基本戦略(IT戦略会議が2000年年11月27日に決定)、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)e-Japan戦略(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)の第1回会合[2001年1月22日]において国家戦略として決定されたもの)、構造改革
    個人情報保護法、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)、
    公的個人認証サービス
    「電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律」(2002年12月6日に可決成立)に基づく公的サービス
    <関連リンク>
    自治体情報政策研究所「電子自治体情報」
    公的個人認証サービスポータルサイト
     
     
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