- 山内溥(任天堂の3代目社長[1949年-2002年]の発言 — 「市場調査? そんなことしてどうするんですか?」
- 井深大(ソニーの創業者)の発言 — 「モノを出すことによって初めて市場調査ができる」
- 盛田昭夫(ソニーの創業者)のトランジスタラジオに関する発言 — 「まずモノを作って、それがなぜ必要なのかを喚起していく。これがマーケットクリエーションでしょう」
- ソニー『Sony History』第3章「テープレコーダーに惚れた男」の第4話「溝を掘って水を流せ」[テープレコーダーに関するソニーのWeb上の記述]
- マーケットリサーチに頼って商品企画をすると、最大公約数を狙った平凡な商品になってしまう危険性がある
- 顧客を裏切る・・・顧客が「欲しいと思っている」モノは、「顧客が真に望んでいるモノ」とは異なることもある
- ホンダのクロスロードの開発責任者の安木茂宏の発言 — 「開発の出発点となるコンセプト作りの段階で、消費者調査をしないことにした」
https://newspicks.com/news/933845/body/
麻野信弘によれば、ダイソンは市場調査の代わりに、ジェームズ・ダイソン直属のエンジニアチームが実際に来日して消費者の自宅を訪問して実際の掃除の様子を観察している、とのことである。すなわち、「大阪や東京、郊外や大都市、マンションや一軒家などさまざまな家庭にお邪魔して、掃除をしているところを、ひたすらみます。これこそネットに頼ったリサーチではなく、本物のリサーチだと思います。さまざまなシチュエーションでダイソンの製品がどう使われているのか、じっと観察することで意外な発見が生まれます。」と語っている。
なお「ダイソン、ファン吸引術、売り場・値下げ、戦略緻密、家庭訪問、生の声開発に。」『日経MJ(流通新聞)』2015年06月17日では、ジェームズ・ダイソンが「商品開発では市場調査を先行させない。従来家電に使い慣れている消費者はその『問題』に気付きにくいためだ」、「事前に消費者の声や要望を聞いても多機能になりすぎるだけ。」と述べたことを紹介している。また同記事では、ダイソン社は、「消費者調査に頼らない」「広告宣伝費より技術開発に投資」「安売りはしない」という3原則を掲げ、「問題解決型の商品開発」の手法によりあくまで「技術力ありきの経営」を貫いてきた、としている。
https://forbesjapan.com/articles/detail/30587
なおWalker, Sam (2019)「「テスラCEOの無謀な賭け、時代遅れの経営術:ビッグデータ時代に市場調査をないがしろにする愚かさ」」The Wall Street Journal, 2019年12月3日,https://jp.wsj.com/articles/SB10604826591205724510004586054813001991394[原文:Walker, Sam (2019)”Elon Musk and the Dying Art of the Big Bet: In the age of Big Data, Tesla’s stated approach to market research—ignoring it altogether—seems especially reckless”]は、イーロン・マスクの同発言を引用しながら、市場調査を無視するイーロン・マスクの姿勢を批判している。
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/capsule/21/index.html
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/1-03.html#block10
https://wotopi.jp/archives/32277
そしてそうした考え方に基づき製品開発をおこなっているため、商品調査があまり意味がないとして、「商品を出す前に市場調査を行っている会社も多いと思いますが、キングジムの商品のように「今まで世の中になかったもの」は調査をしても、正確な答えが出ないんですよね。たとえば「冷蔵庫の野菜室はどれくらいの大きさがいいですか?」という質問だったら調査をして答えが出ますが、「見たことのないもの」を欲しいかどうかなんて、消費者には分からない。なのでキングジムでは答えのない調査はしないポリシーなんです。」と述べている。
https://marketingnative.jp/kingjim/
本記事で亀田登信は、キングジムが新製品開発に際して市場調査をしない理由を下記のように3つ挙げている。
理由2 ターゲット層とする顧客が「調査段階で商品の出来上がりを想像するのは難しい」からである。というのも、キングジムは「主に新しい概念の商品を手掛けていますから、実際に商品、もしくはそれに近い形でないと、お客さんに特徴がわかりにくい」ため、商品化の後でないと顧客が実際に購入するかどうかが明確にはわからないためである。
理由3 「外部の調査会社を使って調査する費用と時間があれば、商品が作れてしまう」からである。キングジムは、「商品を素材から作っているわけではないので、物を作るフットワークが軽く、市場調査を行うよりも実際に商品として出すほうが速い」、「とりあえず商品を出してみて、そこで初めて市場調査をしている」、「商品が当たったら、市場の反応を見て方向を修正していく。「ポメラ」の場合、2号機や3号機などはトライアンドエラーを繰り返して改良し、発売していました。」としている。
https://www.news-postseven.com/archives/20170907_610809.html
http://kanzaki.sub.jp/archives/002528.html
本記事では、市場調査に対する直接の否定的発言はないが、「顧客が既に認識している問題の解決」はリノベーションであり、「顧客がまだ認識していない問題の解決」こそがイノベーションである、としている。「顧客がまだ認識していない問題」は市場調査で解明することができない、という意味で高岡浩三の見解は市場調査から出発する新製品開発に対して否定的なものと捉えることができる。
なお高岡は、コーヒーをおいしく飲むためのマシンを開発することで顧客がまだ認識していない問題を解決したイノベーションの具体例として、家庭用のドリップ式コーヒーメーカー、自動販売機の保温機能(ホットベンディング)の開発を挙げている。
http://kanzaki.sub.jp/archives/002528.html