企業研究 – ダイソンに関するメモ

佐野ゼミでは、イノベーション、特に技術革新的イノベーションの視点から企業、産業、社会のあり方を論じている。

佐野ゼミの課題提出として企業研究をおこなう場合にもそうした視点から分析・検討をおこなうことが必要である。

そうした作業のためにはまず行うべきことは、「どのような資料があるのか?」を調べ、「数多くの資料にあたってメモを作成する」ことである。ここではダイソン社を例としてどのようにするのかを示すことにする。

ダイソン社関連資料
  1. ダイソン, J.(2014a)「編集長インタビュー 英ダイソン チーフエンジニア(創業者)ジェームズ・ダイソン氏 失敗の積み重ねこそ力」『日経ビジネス』2014年4月28日-5月5日合併号, pp.112-115
  2. ダイソン, J.(2014b)「編集長インタビュー ジェームズ・ダイソン氏 英ダイソン チーフエンジニア(創業者) 常に他社と違うものを求め挑む」『日経トップリーダー』2014年7月号, pp.52-54
  3. 美崎栄一郎(2014)「吸引力の落ちない掃除機 「見える効果」にユーザー納得」(美崎栄一郎のヒット謎解き 第5回)『日経ものづくり』2014年3月号, pp.109-114
ダイソン社関連メモ
1.ダイソンの創業者兼チーフエンジニアのジェームズ・ダイソンの研究開発に対する姿勢
ダイソンは、売り上げの15%程度を研究開発費に充て、英国の研究開発施設を約2億5千万ポンド(約425億円)かけて拡張する計画、および、3000人のエンジニア採用計画を2014年に打ち出すなど技術開発に積極的に取り組んでいる。その背景には、ダイソンの創業者兼チーフエンジニアであるジェームズ・ダイソンの研究開発重という考え方がある。
「新しい技術や商品作りに情熱を持ち続けている」「より性能が優れた製品を開発できた時に喜びを感じます」「世界の家電市場を見渡すと、競争がさらに激しくなっている・・・研究開発費を2年で2倍に、4年後には現在の4倍にまで引き上げます。生産規模も同様に拡大し、競争力を高めていくつもりです。」[出典]ダイソン, J.(2014)「編集長インタビュー 英ダイソン チーフエンジニア(創業者)ジェームズ・ダイソン氏」『日経ビジネス』2014年4月28日-5月5日合併号, p.112
  
2.マーケティング調査結果 vs 技術者の意見
ジェームズ・ダイソンは、インタビューにおける「ダイソンさんは新製品を開発する時に、マーケティング調査の結果よりも技術者の意見を大事にするそうですね。」という質問に対して下記のように答えている。
消費者の声を集約した調査結果を信頼してしまうと、誤った判断を下しがちです。消費者はまだ見たことがない商品や機能について聞かれても、的確な答えができません。でも、消費者は思いもつかなかった商品を手に入れたがります

  
3.独自性の追求による競争優位性の確保
ジェームズ・ダイソンは、「他社の先を進み続ける秘訣」に関する問いに下記のように答えている。
「我々はほかのものをコピーすることが嫌い」として、他社製品の模倣行為に関して「絶対に避けるべき行動」であるとして、「ダイソンは常に他社と違うことを追い求め、独自技術の開発に挑んでいます」としている。また製品化までに時間がかかる場合もあるとして、「20年ほど後に量産するような製品のアイデアについて検討するプロジェクトを大学と一緒になって進めています。」と述べている。[出典]ダイソン, J.(2014b)「編集長インタビュー ジェームズ・ダイソン氏 英ダイソン チーフエンジニア(創業者) 常に他社と違うものを求め挑む」『日経トップリーダー』2014年7月号, p.52
また人材採用に関連して下記のように述べている。
「未経験者を大切にしています。我々は他社と異なることに挑戦するわけですから、過去にどのように働いたかは、ほとんど価値がありません。」、「誰かのまねをする人には関心がありません。我々はパイオニアにでありたい」、「新しい技術で世界を変えていく。そのような人材を評価しています。」[出典]ダイソン, J.(2014b)「編集長インタビュー ジェームズ・ダイソン氏 英ダイソン チーフエンジニア(創業者) 常に他社と違うものを求め挑む」『日経トップリーダー』2014年7月号, p.54
  
4.サイクロン掃除機の発明に関わるエピソード
サイクロン掃除機という技術的アイデアの起源は、製材所のサイクロンにある。
「1978年 ジェームズ ダイソンは、当時使っていた掃除機の性能が低下することに不満を持ちました。掃除機を分解してみると紙パックがゴミで目詰まりして、吸引力の低下を起こしているのだと気付きました。この解決法を探し求めていたある日、製材工場の屋根に木くずと空気を分離するサイクロン装置を見てひらめきました。しかし、同じ原理が掃除機にも通用するでしょうか。5年と5,127台の試作品を経て、ジェームズは世界初のサイクロン掃除機の開発に成功しました。」[出典]ダイソン「ダイソンについて」
http://www.dyson.co.jp/community/about-dyson.aspx
 
掃除機の開発の契機に関しては上記と少し異なる記述もある。美崎栄一郎(2014)「吸引力の落ちない掃除機 「見える効果」にユーザー納得」『日経ものづくり』2014年3月号, pp.111では掃除機開発のきっかけは1978年ではなく、1981年とされている。卒業論文においては、「1978年と1981年のどちらが正しいのか?」という問題を取り上げて論じることも期待されている。
  
カテゴリー: 佐野ゼミ生用課題, 遅刻者・欠席者用課題 パーマリンク