佐野ゼミ 3年次 2014.05.28

新製品開発に際して、「需要(demand)に関する市場調査に基づいて製品イノベーションを進める」Market-oriented Innovation的やり方と、「需要(demand)に関する市場調査をおこなうことなく製品イノベーションを進める」Technology-oriented Innovation的やり方の二種類が存在する。

「需要(demand)に関する市場調査をさほど重視しないで製品イノベーションを進めるべきだ」とする発言としては下記がある。

発言1>任天堂の3代目社長[1949年-2002年]の山内溥の発言
「市場調査? そんなことしてどうするんですか? ―― なるほど、その結果に基づいた商品を開発したときは、ユーザーの気持ちは離れているということですね。たしかに、そういったタイムラグという問題もある。でもね、任天堂が市場を創り出すんですよ。調査する必要などどこにもないでしょう。」(高橋健二(1986)『任天堂商法の秘密――いかにして“子ども心”を掴んだか』祥伝社)といった発言をしている。

発言2>ソニーの創業者の井深大の発言
「市場調査によって新製品を企画するのが米国の常識になっているが、モノを出すことによって初めて市場調査ができる。それ以来、私は『マーケット・クリエーションを伴うものが新しい製品だ。本当の新製品はマーケット・クリエーションがなければならないのだ』ということを強く考えるようになった」ソニー(2009)「Sony Japan | タイムカプセル vol.21 創業者 井深の初夢、正夢となる」
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/capsule/21/index.html

 
発言3>本田技術研究所四輪開発センター 企画室LPL主任研究員(当時)の安木茂宏の発言
安木氏は、「アコード」「シビック」など、ホンダを代表する自動車の開発に長年にわたり携わってきたが、2007年2月発売のクロスロードという新車種の開発責任者として製品コンセプトを決定する際に、消費者調査をしないことを決めたとして次のように語っている。
「新車種の開発責任者を務めるに当たって、決めたことが1つある。 /それは消費者の声に耳を傾けないこと。開発の出発点となるコンセプト作りの段階で、消費者調査をしないことにしたのである。 /コンセプト作りは、とても重要な作業である。デザインや乗り心地、価格、そのほか細かい仕様を決める原点だ。この段階で、顧客に自動車に対する意識や嗜好、改善してほしい点などを綿密に調査することは一般的である。/安木氏が消費者の声をあえて排除したのは、「顧客の期待をちょっと上回る自動車を世に送り出す」のを狙ったためだ。市場調査からは、この「ちょっと上回る期待」を導き出すことが難しいのだという。実際に販売される数年先に顧客が欲しい自動車を想像したうえで、さらにそれを上回る期待に応えるのが安木氏の役割。/「現時点で探った顧客の期待の通りだと、すぐに自動車が風化してしまうんです」」「ヒットのタネは「!」 その3 - ホンダ 東芝」『日経ビジネス』2007年09月10日号,pp.38-39
 
上記のことを踏まえて、下記の課題のどれか一つを取り上げてレポートをしなさい。
 
課題1 demandに関する市場調査をおこなうことなく(あるいは市場調査の結果を重視することなく)製品イノベーションを進めるTechnology-oriented Innovation的やり方で、市場的成功をおさめた事例を探し出しなさい。なおその際には、販売数量、売上金額などの具体的数値を必ず挙げなさい。
 また上記の発言3などのように、「demandに関する市場調査をおこわなかったこと」、あるいは、「市場調査の結果を重視しなかったこと」がわかる具体的根拠も同時に挙げなさい。

課題2 demandに関する市場調査に基づいて製品イノベーションを進めるMarket-oriented Innovation的やり方で、市場的成功をおさめた事例を探し出しなさい。なおその際には、販売数量、売上金額などの具体的数値を必ず挙げなさい。

課題3 P&Gの下記WEBに挙げられている事例の中には、demandに関する市場調査に基づくものではなく、人々のnecessity/usefulnessに関する科学的分析や技術的分析に基づく製品イノベーションがある。そうしたことに該当する事例すべてを挙げなさい。
 またP&Gのそうした事例以外で、necessity/usefulnessの分析に基づく製品イノベーションの事例を一つ探し出して説明しなさい。

カテゴリー: 2014年度-3年次ゼミ(2013-2015), 佐野ゼミ生用, 未分類 パーマリンク