佐野ゼミ3年次-2014.05.07

[次回ゼミの課題]

下記の資料にあるように、日常的に「ニーズ」と呼ばれている用語は、多義的な意味・用法を持っている。イノベーションの学問的考察に際しては、そうした多義性を踏まえた考察が必要不可欠である。

上記の資料にあるように、学問的考察に際しては、日常的用語としての「ニーズ」という語句ではなく、「necessity/usefulness」(必要性/有用性)、「wants」(欲求)、「demand」(購入)という理論的用語を用いるべきである。こうした区別を踏まえると、「新製品に対するニーズがある」という日常的表現は、下記のような表現の一つまたは複数に置き換える必要がある。

  1. 「新世代製品は顧客が必要としている機能を有している」「新世代製品は顧客の必要に応える機能を有している」
  2. 「新世代製品は顧客が必要としている性能を有している」「新世代製品は顧客の必要に十分に応える性能を有している」
  3. 「新世代製品の新しい機能は対象顧客にとって有用である」「新世代製品の新しい機能は顧客にとって役立つものでる」
  4. 「新世代製品の性能の高さは対象顧客にとって旧世代製品よりも有用である」「新世代製品の性能の高さは顧客にとって旧世代製品よりも役立つものでる」
  5. 「かなりの数の顧客が旧世代製品よりも新世代製品を欲しがっている」「旧世代製品よりも新世代製品を欲しいと思っている顧客がかなりいる」
  6. 「かなりの数の顧客が実際に新世代製品を購入している」「新世代製品は実際にかなり売れている」

そこで次回のゼミにおいては、こうしたことを踏まえて、「necessity/usefulness」(必要性/有用性)に基づくイノベーション、「wants」(欲求)に基づくイノベーション、「demand」(購入)に基づくイノベーションの相対的区別に関わるレポートの提出を求める。

具体的には、資料1に挙げた三つの具体例「第二次世界大戦後に日本で初めて開発された旅客機であるYS11」、「イギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機コンコルド」、「三井造船が事業主体となって開発を進めた「次世代」高速船・テクノスーパーライナー(TSL)」などのように、「製品それ自体としては比較的大きなusefulness(有用性)を持ち一定の技術的評価は得たが、製品に対するdemand(需要)がそれほど大きくはなく大きな市場的成功を収めることができなかった製品」を探し出しなさい。そして、資料1の三つの具体例のように、下記の事項を含むレポートを提出しなさい。

  1. 「関連画像」
  2. 「どのような意味で技術的イノベーションとして評価されているのか?[新世代製品の性能は旧世代製品に比べてどのように向上したのか?新世代製品は旧世代製品にはないどのような機能を有しているのか?]」
  3. 「製品に対するdemand(需要)の大きさはどの程度であったのか?[製品はどの程度売れたのか?販売された期間は何年から何年までなのか?]」

 

カテゴリー: 2014年度-3年次ゼミ(2013-2015), イノベーション論, 佐野ゼミ生用 パーマリンク