2013.10.30 佐野ゼミ2年次授業

[先週の授業内容]
[今週の授業内容]
1.前嶋さんによる発表「iPodはHDD型携帯音楽プレーヤとしてどのようなバンドワゴン効果を利用して優位性を確保したのか?」
実際の発表はiPod Nanoというフラッシュメモリ型携帯音楽プレーヤーについての発表であった
また、バンドワゴン効果が「ライベンシュタインのバンドワゴン効果」という心理学的効果だけに限定されていた。

2.前嶋さんの発表を受けた教員による補足説明
(1)「心理学」的効果としてのバンドワゴン効果と、「経済学」的効果としてのバンドワゴン効果

a.「心理学」的効果としてのバンドワゴン効果 —「売れていない製品よりも、売れている製品の方を買おうとする」「市場でよく売れている製品を自分も買おうとする」心理学的効果

b.「経済学」的効果としてのバンドワゴン効果 —「売れていない製品よりも、売れている製品の方を買う」ことの経済的メリット、「同一製品(同一サービス)のユーザー数が少ない製品(サービス)よりも、同一製品(同一サービス)のユーザーが多い製品(サービス)を購入する」ことの経済的メリット

・「同一のネットワークに属するユーザーが多ければ多いほど、それだけ経済的メリットが増す」というネットワーク効果

授業ではコミュニケーションリンクの数に関して計算ミスをした。2C2=1、12C2=66というのが正しい数値である。すなわち、構成メンバー数が2の場合のコミュニケーションリンク数は1であるが、構成メンバー数が12の場合のコミュニケーションリンク数は66となる。構成メンバー数が2から12へ6倍になると、コミュニケーションリンク数は1から66へと66倍にもなる。

・「優れた補完財の数が多い製品の方が補完財の数が少ない製品よりも経済的メリットが大きい」という補完財によるバンドワゴン効果
電気自動車とハイブリッド自動車の製品間競争は、それらの製品本体の技術的優秀性による競争とともに、それらの製品に対する補完財の技術的優秀性や補完財それ自体の社会的普及度など補完財に関する競争によっても、優劣が規定されている。

上記のようなバンドワゴン効果が存在すると、製品「本体」それ自体の性能が同一であっても、より売れている製品の方が製品「システム」としての性能が高いことになる。その結果として、売れる製品が雪だるま式により売れるようになるというマタイ効果が生じることになる。

<補足説明事項>
1.供給サイドの「規模の経済」効果
—- 製品の製造単価(サービスの提供単価)は、総製造数(総提供数)が大きくなればなるほど、低くなる。これは、研究開発費などの総固定費用は、総製造数(総提供数)が大きくなればなるほど、1製品(1サービス)当たりの固定費用負担がそれだけ低くなることから発生するものである。

これに関連して、可変費用と固定費用の区別を論じた。また新製品を開発するための研究開発にかかる費用(研究開発費)は、結果的な総生産台数が多くても少なくても一定不変で固定であることから、固定費用となることを説明した。

<参考事例>
1.消費者の心理的満足感が消費行動(購買行動)に及ぼす3つの影響・・・バンドワゴン効果、スノッブ効果、ヴェブレン効果
他者の消費行動(購買行動)によって消費者心理が変化するという心理学的効果としては、「購入者数がより多い製品を購入したい、すなわち、他の消費者となるべく同一の製品を購入したい」と考えるバンドワゴン効果以外に、「購入者数がより少ない製品、すなわち、他の消費者とはなるべく異なる製品を購入したい」と考えるスノッブ効果、「なるべく高いものを購入したい」と考えるヴェブレン効果がある。

参考URL
佐野正博博(2010)「ライベンシュタインおよびロルフスのバンドワゴン効果論」
http://www.sanosemi.com/biztech/document/bandwagon2011.pdf

2.マタイ効果
「富める者はますます富み、貧しきものはますます貧しくなる」という趣旨の文言が新約聖書のマタイ福音書の第13章12節の中にあるので、マタイ効果と呼ばれている。

「おおよそ、持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう」
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