洗剤のイノベーション

洗剤に関する技術的イノベーションの歴史
中曽根弓夫(2007)「石鹸・合成洗剤の技術発展の系統化調査」『国立科学博物館技術の系統化調査報告』Vol.9、57pp.
http://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/033.pdf

衣料用洗剤の技術的イノベーションの展開に関して、日本における最初の民間の石鹸製造所の開業(1873年)から、現在のコンパクト洗剤が普及し、成熟期を迎えた1996年頃までの約120年間を取り扱った報告書。
本報告書では下記のように5つに時期区分をしている。

第Ⅰ期(1873~1937年)石鹸時代
第Ⅱ期(1937~1951年)合成洗剤の黎明期
第Ⅲ期(1951~1966年)合成洗剤の普及期
第Ⅳ期(1966~1987年)合成洗剤の環境対応期
第Ⅴ期(1987~1996年)合成洗剤のコンパクト化・成熟期
 
P&Gのジェルボール
週刊ダイヤモンド編集部(2015)「第3の洗剤ジェルボールがシェアを急拡大させたワケ」DIAMOND Online、2015.8.26
https://diamond.jp/articles/-/77216

「粉末でもなく、液体でもない第3の洗剤」と位置付けられている。
P&Gによれば、市場投入から1年で、市場シェア8%に達する「予測を大きく上回る大ヒット」となった製品である。
P&Gによれば、そのようにヒットした理由は「水溶性のフィルムに洗濯1回分のジェル状洗剤を密封することで計量の手間を省いた手軽さ」と「高い洗浄力」にある。

ただし花王やライオンも以前にジェルボールと類似の製品開発コンセプトに基づく水溶性のシート型やタブレット型の製品を市場投入したが、結局のところ失敗した。
そうした失敗の経験から、「洗濯物の量で、洗剤の量も節約しがちな日本の主婦の間で、分量の調整ができないジェルボール型が主流になるとは考えにくい。今の勢いは一時の流行で、そろそろ頭打ち」であるとする見方も強い。

 

福島久美子、池原照雄(2015)「欧米発のジェル状洗剤 ー 難題は日本の洗濯環境」WEDGE Infinity>ヒットメーカーの舞台裏、2015年5月5日
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4937

福島久美子さん (プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン 研究開発本部)
池原照雄 (ジャーナリスト)

P&Gで日本およびアジア向け製品の開発責任者を務める研究開発本部シニアサイエンティストの福島久美子氏によると、「日本の洗濯は欧米に比べ、水温の低さや洗濯時間の短さなど、洗剤にとっての条件は厳しい」とのことである。すなわち、ヨーロッパでは温水を使うのが一般的で平均水温は約40℃、洗う時間は平均60分であるのに対して、日本では水温の低い水道水を使うのが普通で、洗う時間も平均8分と短い。
こうした欧米と日本による洗濯の条件の違いのため、製品化で先行した欧米のジェルボール製品を日本にそのまま投入することはできなかった。低水温で洗濯時間が短い日本では、洗剤を包むフィルムが十分に溶けないといったような不具合の克服が必要となった。P&Gはそのために4年にわたる試行錯誤を続けてようやく日本での製品化にこぎつけた。

「1億個売れた新型洗剤 「精神的な時短」がヒットの鍵」(特集 人気「時短」商品 ヒットへのアプローチ 中編)『日経トレンディネット』2017/11/12
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO22783870X21C17A0000000/

井上佐保子8(2017)「業務を曜日で分別管理!「アリエールパワージェルボール」開発者の手帳拝見」『PRESIDENT』2015年2月2日号、President online, 2015.7.24
https://president.jp/articles/-/15727

ヨーロッパではジェルボール型製品は、2001年頃から発売されていた。しかし、ヨーロッパと日本では洗濯条件や習慣が異なるため、日本でそのまま販売できなかった。ヨーロッパでは水温40度で1時間以上の洗い時間が確保されているが、日本では低水温で10分以内である。また日本では湿度が高いため、汗臭さや染みへの対応や、選択終了後の生乾きの臭いへの対応も必要であったからである。
 
アタック
 
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