佐野ゼミにおける卒業論文およびレポート

 

教員としては、いわゆる「守破離」といった考え方に基づいて、皆さんが卒業論文やレポートを作成していただければと考えています。

すなわち、元となる素材もアイデアも何もない中から、レポートや論文を作成することは困難ですし、効率的でもありません。卒業論文やレポートのもととなる素材やアイデアのすべてを自分で作成・用意することも現実的には不可能なことです。他の人や企業がすでにおこなった調査や研究のデータやレポートを、自分の卒業論文やレポートのためのネタ元(素材)として積極的に使うことは良い卒業論文やレポートを作成するのに有用ですし、必要不可欠なことです。
企業経営の分析においてポジショニング・アプローチ的視点とResource-Based View的視点の両方が必要なように、卒業論文やレポートの作成においても、「どのような問題意識のもとに分析するのか?」ということとともに、「どのようなresourceが利用可能なのか?」ということが重要です。卒業論文やレポートの作成に取り掛かる際には,優れたresourceが数多くあるようなテーマ・問題を選択するようにしてください。

ただし自分の知的能力を高めるためには「レポートの文章のoriginが自分である」という表現のoriginalityが重要です。他人の文章をコピペするということは、いわば「知的窃盗行為」であると同時に「知的自殺行為」です。

 
それゆえ佐野ゼミにおける卒論およびレポート作成に当たっては、下記の注意事項を絶対に守ってください。
 
A.絶対に守るべき内容的基本事項
  1. イノベーションという視点から議論すること
  2. 一つの論点あるいは一つの節について、日本語版Wikipediaや、まとめサイトの記述だけを見てレポートを作成するような手抜きは絶対にしないでください。
    そのような行為は、卒論やレポートの作成を課題としてこなすことの教育的意味を損なうものとして知的自殺行為です。そうしたことは社会のAI化イノベーションの中でたくましく生き抜くために必要な自分の能力を伸ばすことにつながらず、単なる時間の無駄です。
    課題レポートの作成に際して、まとめサイトやウィキペディアなどに類いするWEBサイトの記述を参照することそれ自体はレポート作成時間の短縮のためにも有用ですので構いませんが、そうした場合には、そうしたWEBサイトの記述が参照している元のWEBページや文献資料も必ず読んで下さい。
  3. レポート作成に際しては必ず複数の記事・論文を見ること — 1つの論点に関して日本語版Wikipediaやまとめサイト以外に、5つ以上の参考資料[originalのWEBページまたは文献資料]を必ず参照すること。なお参考資料の中には、「pdfタイプの学術的資料」、または当該論点に関して数多くの資料に基づいて論じている学術的WEBページを必ず1つ以上含むこと。
    発明協会「デジタルカメラ」戦後日本のイノベーション100選
    http://koueki.jiii.or.jp/innovation100/innovation_detail.php?eid=00095&age=present-day
  4. レポートにおける重要な論点・主張の根拠となる数値データや事実的データに関しては、その元データがどこにあるのかを調べて、元データを参考資料として挙げておくこと。
  5. 製品イノベーションのプロセスなど歴史的変化を取り扱う際には関連する複数年のデータを取り扱うこと、また現状分析や未来予測を取り扱う際には可能な限り最新のデータを探し出して用いること
    例えばファミコンを取り扱う際には、https://sanosemi.info/archives/2400に挙げられているような複数年のデータを取り扱うことが必要である。
     また現状分析に際しては、2015年度の卒論で朝日新聞社(2009)「ファストファッションとは」という古い記事に基づいて「ファストファッション業界における世界の大手3社は、米国のGAP、ZARAなどを傘下に持つスペインのインディテックス、スウェーデンのH&Mである。これら3社は、各社とも年間約1兆3000億円から1兆4000億円前後の売り上げがある。日本のユニクロの売上高はこれら3社の半分以下である。」といった記載をすることはまったく不適切である。
 
B.絶対に守るべき形式的基本事項
  1. レポート作成に際しては必ず佐野ゼミレポート見本のテンプレート・ファイルを用いて作成すること
  2. レポート作成に際しては「参考文献」欄以外の文章の量をレポートの文字数の8割以上とすること
  3. 主張の根拠となる数値データまたは事実的データが出典付きで明示的に示されていること。数値データ表の場合には表のすぐ下に出典を明記すること、また表ではなく、文章の場合にはそのことが書かれている文章に脚注形式で入れておくこと
  4. 他人の文章をそのまま引用する際には、かぎ括弧(「」)を使用するか、改行とインデントをして直接引用であることがはっきりとわかるようにしておくこと
  5. 他人の文章表現をそのまま使わなかった場合でも、参考にした場合には、「ポーター (1985,p.207)によれば・・・・である」と言った形式で、利用した参考文献を本文中に明示しておくこと
  6. 参考資料の記載に際しては、Who, When, What, Whereという4つの情報、すなわち、Who(書いたのは誰か?著者・執筆者は誰か?あるいはどの企業・組織か?)、When(いつ書かれたのか?いつ発表(または作成)されたのか?雑誌の発行年月日(または巻号数)はいつなのか?)、What(タイトルは何か?)、Where(資料は掲載場所はどこか?どこの出版社なのか?どの雑誌なのか?URLは何か?)という4つの情報を必ず盛り込んでおくこと
     
    例えば、下記のような記載は、アクセス日が記載されていますが、同WEBページの「執筆者」というWhoに関する情報、「記載内容の作成日時」というWhenに関する情報が記載されておらず、まったく不適切です。
     

    SYNERGY,枯れた技術の水平志向(2020/11/29)
    https://www.kk-synergy.co.jp/cat01/211547/

     
    上記は正しくは下記のように記載すべきです。
     

    吉本憲矢(2019)「枯れた技術の水平思考」シナジー活動記、2019/09/07
    https://www.kk-synergy.co.jp/cat01/211547/
    アクセス日:2020/11/29

  7. WEBページの著者名が明記されていない場合には、そのWEBページを作成した団体名・企業名を著者名として挙げておくこと。
  8. WEBページで作成年が不明な場合には、著者名の後に作成年を入れることができないので、その代わりにアクセス日を必ず入れておくこと。
    たとえば、https://www.nintendo.co.jp/wii/features/virtual_console.htmlといったWEBページには、そのWEBページの著者名および作成年が明記されてはいません。そうした場合には下記のように、WEBページを開設しているサイトの企業名を著者名として取り扱い、下記のように引用表示をして下さい。
    なお可能であれば、上記のようにアクセス日を記載する方法ではなく、下記のようにweb.archive.org上のデータを参照して日付を記入する方法を取ってください。
  9. 引用文献や参考文献は可能な限りネタ元を探して、ネタ元に基づいて記述を行うこと
    自分が利用使用している文献やWEBページが他の文献やWEBページに基づいた記述である場合には、可能な限り、オリジナルの文献やWEBページを探し出して、それに基づく記述にすること。Wikipediaやまとめサイトの記述だけで、卒業論文やレポートを作成するようなことは絶対にしないこと。
    伝言ゲームなどがそうであるが、他者の引用や孫引きを利用して文章を書くと、内容が不正確になる。また自分が知りたいことや内容記述に際して必要不可欠な事項が書かれていないことも多いので、必ずオリジナルに当たること。
  10. 佐野ゼミにおける独自の要求ですが、卒業論文の章または節、レポートの論点ごとに、利用した参考文献の一覧を下記のように簡略化した形で付けておいて下さい。また参考文献のフル情報は、卒業論文またはレポートの最後のところに、「参考文献一覧」というコーナーを設けて、ローマ字順、あいうえお順で下記のように記載しておいて下さい。
     
    卒業論文の章または節、レポートの論点ごとの最後の部分における記載形式
    「参考文献一覧」コーナーでフル情報を記載しておけば、下記のように簡略化した形式でも、利用した参考文献がどれなのかがきちんと分かります。
    大和総研(2018)
    日本エネルギー経済研究所(2019)
     
    「参考文献一覧」コーナーにおける記載形式
    大和総研(2018)「海外のライドシェアの現状と日本でのあり方」2018年6月1日
    https://www.dir.co.jp/report/research/policy-analysis/human-society/20180601_020125.pdf
    日本エネルギー経済研究所(2019)「ライドシェアの現状と日本における導入方法の検討」2019年3月
    https://eneken.ieej.or.jp/data/8339.pdf
     
  11. 卒業論文やレポートで参考にしているデータ(あるいは、参考にしようとしているデータ)は必ず自分のPCやネット上に保存しておくこと
    論文やレポートの訂正を求められた時や、文字数が不足しているため書き足そうとする時には、参考データがすぐに参照できないと時間のムダになりますし、WEB上のデータはいつ利用できなくなるかわからないので、後ですぐに利用できるように自分のPC上やクラウド上に必ずコピーを保存しておいてください。
    なおWEB上のデータで現時点で参照できなくなっていた場合には、、WEB Archive(http://archive.org/web/)などを利用することでアクセスできる場合もある。
    たとえば、キリンのデータブック2011は2013年11月20日時点では見ることができない。しかしそのアドレスがわかっていれば下記のようにWEB Archiveを利用して2012年8月13日の掲載データを探し出すこともできる。
    http://web.archive.org/web/20120813155759/http://www.kirin.co.jp/company/kb/marketdata/pdf/databook2011_01.pdf
  12. 卒業論文やレポートでは「である」調で文体を統一すること
  13. 「・・・です。」「・・・と言われています。」など、ですます調で書かないこと。話し言葉と書き言葉を分けてレポートや卒論の作成をおこなってください。
    また「世界の大手3社は、米国のGAP、ZARAなどを傘下に持つスペインの INDITEX(インディテックス)、スウェーデンのH&M。 」といったような体言止めの文章を本文では原則として用いないでください。
  14. 章ごとに、改ページを入れること
    卒論のように、複数の章からなる文章の場合には、章のタイトルのページの冒頭にくるように、章末で改ページすること。
  15. 卒業論文やレポートは、読書感想文、エッセー、週刊紙記事とは異なるスタイルで書くこと
    「最近では「電動化」した自動車で高速道路を手放し運転走行したことで問題になったことが記憶にある。」「・・・に感動した。」といったスタイルでの記述はしないこと。
  16. 文章のまとまりごとに、改行を適宜入れること
  17. 言及している内容が変わるごとに改行をすること。そうしないと非常に読みづらい文章になる。
    [改行なしの文章]
     ビジネス・イノベーションに対応するのは製品ではなく、ビジネス・システムである。製品それ自身が複数のモジュールや多数の部品から構成されているように、ビジネスの遂行に際しても複数の製品が必要とされる。個々の製品はその複合体である製品システムとしてはじめて有用性を発揮する。個々の製品それ単独では顧客の必要性を充足せず、製品としての有用性を発揮できないことが多い。複数の製品の適切な組み合わせによって構成される製品システムがビジネスの基礎である。イノベーションの遂行に際してはそうした製品システム論的視点からの対応が必要不可欠である。たとえばガソリン自動車から電気自動車へのイノベーションに関しては、製品システム性の理解に基づく対応が必要である。 各種の製品が一つのシステムとして顧客の必要性を満たしたり、有用性を実現したりしているため、ビジネスという視点からはそうした製品システム性を考慮してはじめてイノベーションがビジネス的に成功することになる。自転車の利便性向上によって販売台数を増加させようとするならば、自転車専用道路の整備・拡充が有用である。これは、高速道路という自動車専用道路の整備・拡充が自動車の利便性を向上させ、自動車の販売台数増加を促したのと同様である。こうしたことは家電製品の場合には明確に認識されており、ソニーはそうした製品システム性に配慮した事業戦略を意識的に展開している。

    [適宜、改行を入れた文章]
     ビジネス・イノベーションに対応するのは製品ではなく、ビジネス・システムである。製品それ自身が複数のモジュールや多数の部品から構成されているように、ビジネスの遂行に際しても複数の製品が必要とされる。個々の製品はその複合体である製品システムとしてはじめて有用性を発揮する。
     個々の製品それ単独では顧客の必要性を充足せず、製品としての有用性を発揮できないことが多い。複数の製品の適切な組み合わせによって構成される製品システムがビジネスの基礎である。イノベーションの遂行に際してはそうした製品システム論的視点からの対応が必要不可欠である。
     たとえばガソリン自動車から電気自動車へのイノベーションに関しては、製品システム性の理解に基づく対応が必要である。 各種の製品が一つのシステムとして顧客の必要性を満たしたり、有用性を実現したりしているため、ビジネスという視点からはそうした製品システム性を考慮してはじめてイノベーションがビジネス的に成功することになる。
     自転車の利便性向上によって販売台数を増加させようとするならば、自転車専用道路の整備・拡充が有用である。これは、高速道路という自動車専用道路の整備・拡充が自動車の利便性を向上させ、自動車の販売台数増加を促したのと同様である。
     こうしたことは家電製品の場合には明確に認識されており、ソニーはそうした製品システム性に配慮した事業戦略を意識的に展開している。

  18. アルファベットの略語に関しては、それが最初に登場した箇所において、どのような語句の略語であるのかがわかるようにしておくこと
    書き方としては、下記を参照してください。
    VAN(Value Added Network,付加価値通信網)は、1970年代に米国で登場した。その当時は、電話回線を利用したパケット変換によるデータ通信が中心であったが、電子メールやデータベース・サービスなどにも利用されていた。こうしたシステムは、一台のメインフレームを多数のコンピュータ端末で共同利用するTSS(Time Sharing System、タイムシェアリングシステム)の発展形と見ることもできる。
    [参考資料]

 
なお、明治大学大学院 経営学研究科 大石研究室「論文執筆にあたって」もとても参考になりますので、読んでおいてください。
 
C.レポート作成に際しては下記の文書に書かれているように、盗用等の不正行為を絶対にしないようにして下さい。不正行為があった場合には、ゼミの単位が認定されないだけでなく、「定期試験での不正行為(カンニング)と同様の処分(その科目のみならず当該期の全登録科目の不合格や停学処分等)の対象となることがあります」ので注意してください。