売上高研究費率と売上高営業利益率

日本における産業分野別の売上高に対する研究開発費率および営業利益率(2007年度から2011年度にかけての5カ年度平均)に関して、下記のように、全産業、製造業、電気機械器具製造業、情報通信機械器具製造業、化学工業、医薬品製造業という5つについて見ると下記のようになっている。

表1 日本における産業分野別の売上高に対する研究開発費率および営業利益率
全産業
製造業
電気機械器具
製造業
情報通信機械
器具製造業
化学工業
医薬品
製造業
研究開発費/売上高
3.4%
4.3%
5.0%
7.1%
7.3%
15.1%
営業利益/
売上高
3.1%
3.9%
4.1%
0.7%
7.7%
14.6%

[考察してみよう]
課題1.上記の表からは、情報通信機械器具製造業を除き、売上高に対する研究開発費の高い産業は売上高営業利益率も高い傾向にあることがうかがえる。このように研究開発費率が高い方が営業利益率も高い傾向が生じる理由・メカニズムに関して考察してみよう。
 ただしそうした考察に際しては産業間比較であることを踏まえるとともに、研究開発によるイノベーションがどのような社会的意義を持っているのかを考慮に入れよう。またどのような場合にコモディティ化が生じるのか、コモディティ化が進行した産業における研究開発の位置づけを考慮に入れよう。

課題2.日本の情報通信機械器具製造業が表1で例外的傾向を示している理由・メカニズムの理解に際しては、国際的競争という視点からの考察が必要である。そのため下記の表2のデータを参考にして考察してみよう。なおそうした考察の際に、相対的競争優位の獲得に関するポータの差別化戦略/コストリーダーシップ戦略という議論の視点も考慮に入れてみよう。

なお情報通信機械器具製造業とは、下記Webに詳しく書かれているが、パソコン、プリンタ、ケータイ、テレビ、FAXなどといった製品の製造に関わる産業である。
http://www.pref.saitama.lg.jp/uploaded/attachment/374367.pdf

表2 情報通信機械器具製造業に属する日米の代表的企業における
研究開発費率および営業利益率の比較
Apple
シャープ
ソニー
パナソニック
Intel
Microsoft
研究開発費/売上高
3%
6%
6%
6%
15%
15%
営業利益率
/売上高
19%
4%
2%
4%
22%
36%
研究開発費
894
1,805
5,051
5,384
7,396
5,630

研究開発費の単位は米国企業が100万ドル、日本企業が億円である。
数値は、連結ベースで2005年度-2009年度の5年間の平均値である。

課題3.売上高研究開発費率と売上高営業利益率との間の相関は、表1の産業分野間におけるこうした統計データだけでなく、表2の個別企業に関するdataにも見ることができる。すなわち、Appleを除き、研究開発費率が高い方が営業利益率も高い。
 なぜAppleだけが表2で例外的傾向を示しているのかについて、その要因を考察してみよう。

なおそうした考察に際しては、アップルが取り扱っている製品セグメントの種類、アップル製品におけるiOSの意味、iOSのカーネル部分のDarwinがOSS(Open Source Software)であることなどを考慮に入れなさい。

課題4.IntelとMicrosoftの研究開発費率はともに15%で同一であるが、営業利益率はMicrosoftがIntelの約7割も高い。こうした現象が生じる要因はいろいろと考えられるが、それぞれの企業が取り扱っている製品との関係で考察してみよう。

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