製品の生産プロセス(Production Process)に関するイノベーションのことを、略してプロセス・イノベーション(Process Innovation)と呼んでいる。製品の生産プロセスに関してイノベーションを起こすことで、製品の製造コスト低減や品質向上などが可能になる。
プロセス・イノベーション(Process Innovation)と対になる単語としては、プロダクト・イノベーション(Product Innovation)がある。両者を「理論概念」的には明確に区別するとともに、イノベーションの歴史的遂行プロセスにおいては両者を「現実」的に連関させて理解することが重要である。
「理論概念」的区別としては、プロダクト・イノベーション(Product Innovation)が「生産される製品に対して新しい機能(Function)を付け加えたり、製品が持つ既存の機能に関する性能(Performance)を向上させることで、製品をイノベーションすること」であるのにたいして、プロセス・イノベーション(Process Innovation)は「同一の機能・性能の製品であっても、そうした製品を製造する生産プロセスをノベーションすることで製品の品質(Quality)向上や、製品の製造コスト(Cost)低減を実現すること」である。
[調べてみよう]
課題1.生産プロセスのイノベーションとしては、20世紀前半にライン生産法へのプロセス・イノベーションが、20世紀後半にはセル生産法へのプロセス・イノベーションが重要である。
それぞれの生産法の特徴を説明するとともに、それぞれの生産法は「それ以前の生産法よりもどのような意味で優れている」と歴史的に考えられているのかを説明しなさい。
またそうした説明の際に、それぞれのプロセス・イノベーションはどのような社会的=時代的要請に応えようとしたものなのかも説明しなさい。
課題2.自動車に関するコスト低減を目標とした最近のプロセス・イノベーションは、複数の車種の間で、車種の基本的特徴を決める車台(シャーシ)の共通化が進められるとともに、複数の車種の間で共通の部品を使用することなどが進められている。.
そのことを詳しく図入りで説明するとともに、そうしたことによってどのような問題点が生じると考えられるのかを説明しなさい。
課題3.上記で取り上げたようなセル生産法へのプロセス・イノベーションは、マクロな社会的視点から見た場合にもプロセス・イノベーションである。しかしそうしたタイプのものとは異なり、マクロな社会的視点から見た場合にはプロセス・イノベーションとは言えないが、個別企業の視点から見た場合には当該企業が関わる生産プロセスのあり方に関する革新であるという意味でプロセス・イノベーションであるものに、水平分業化、垂直統合化がある。
なぜそれらはマクロな社会的視点から見た場合にはプロセス・イノベーションとは言えないが、個別企業の視点から見た場合にはプロセス・イノベーションであるのかを説明するとともに、それぞれのメリット・デメリットを論じなさい。
たとえば、垂直統合化は取引コストの削減、外部取引の内部化による情報の非対称性問題の回避(ex.ブルウイップ効果の回避)による部品・素材の在庫量の最適化などが可能である、と考えられるが、そのことを例を挙げてわかりやすく説明しなさい。
課題4.広義の生産プロセスには、要素技術に関する基礎研究プロセス、製品の研究開発プロセス、製品の製造プロセスなども含まれる。そういう意味では、課題1~3で挙げたような製品の製造プロセスに関するプロセス・イノベーションだけでなく、要素技術に関する基礎研究プロセスや製品の研究開発プロセスに関するプロセス・イノベーション、および、それらの2者または3者の協調的遂行や統合的遂行によるプロセス・イノベーションも存在する。
たとえば、一つの要素技術に関する基礎研究を、複数の製品開発に逐次的、あるいは、同時に活用しやすいような研究機開発プロセスや製造プロセスを革新するということもプロセス・イノベーションである。
このことをわかりやすく説明しなさい。
ピンバック: イノベーションの単語的意味 | 佐野研究室-イノベーション論関連
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