佐野ゼミ卒論テーマに関する絶対的原則-イノベーションをテーマとすること

佐野ゼミにおける卒論は、「イノベーション」をテーマとすることが必須条件です。
 
イノベーションとは、日本語で「革新」、ドイツ語で「Neuerung」、中国語で「創新」とも表記されることに示されているように、「何かを新しいものに変えること」を意味しています。
したがって卒論の形式として下記のような事項が明示されていることが必須です。そうなっていない場合には卒論を不可としますので、書き直しをしてください。
 
1.何に関するイノベーションなのか?
例えば、「広告に関するイノベーション」でいえば、「そもそも広告とは何か?」、「広告業界・広告産業の内部構造と外部環境はどのようになっているのか?」を明確にしたうえで、自分は何を主たる対象として取り上げるのかを明示しておくこと。
自分は何を対象としたイノベーションを論じているのかが、教員にわかるように記述すること。すなわち、下記事項がわかるように書くこと。

どの市場セグメントにおけるイノベーションなのか?(ex.広告市場、PC市場セグメントなど)
あるいは、当該市場セグメントのうちで、どのような市場サブセグメントあるいは製品セグメント市場を対象としているのか?(ex.ネット広告市場、テレビ広告市場、新聞広告市場、フリーペーパー広告市場、デスクトップPCセグメント市場、ノートPCセグメント市場、タブレットPCセグメント市場など)
 
2.何から何へのイノベーションなのか?
When(いつ)、Why(なぜ)、Who(どの企業が、どの人が)、Where(どの市場セグメントで、どの製品セグメントで)、Why(なぜ)、How(どのようにして)イノベーションをおこなってきたのかを、下記のよう分析視点から具体的に考察すること

  1. 旧世代のProduct(製品、サービス、システムなど)はどのようなものであったのか?
  2. 新世代のProduct(製品、サービス、システムなど)はどのようなものであるのか?
 
3.どのようなneeds(広義)に応えるイノベーションなのか?
needs(広義)に関して、下記のような3つのレベル(位相)に分けて論じること

レベル1.有用性(usefulness)や必要性(necessity)といった狭義のneedsというレベルにおけるneeds視点-「顧客(ユーザー)にとってどのように役立つのか?どの程度役立つのか?」「顧客(ユーザー)がどのようなことを必要としているのか?」
  1. イノベーションの遂行者は、顧客にとってのどのような有用性(usefulness)や必要性(necessity)に応えようと意図していたのか?
  2. 当該のイノベーションは、どのような意味で有用性をどの程度増大させるものなのか?それとも増大させないのか?
  3. イノベーションの想定顧客は製品のそうした有用性が自らに必要なことを実際にどこまで認識しているのか?それとも顧客は自らに必要であることを認識していないのか?
レベル2.欲求(wants)というレベルにおけるneeds視点-顧客(ユーザー)はどのような製品を欲しているのか?
  1. 顧客(ユーザー)はどのような機能を持った製品を欲しいと考えているのか?
    顧客(ユーザー)は、自らが欲しいと考えている製品機能に関して最低どの程度以上の性能を望んでいるのか?(当該製品セグメント市場における製品性能下限はどの程度なのか?)

  2. 顧客(ユーザー)は、自らが欲しいと考えている製品機能に関してどの程度以上の性能を望んではいないのか?(当該製品セグメント市場における製品性能上限はどの程度なのか?)
  3. イノベーションの遂行者はどのような顧客の、どのようなwantsに応えようとしているのか?
  4. 当該のイノベーションに対してwantsを現に持っているのは、どのような顧客なのか?
  5. 顧客は自らのwantsをどのような形で明確に述べているのか?

なお上記に関連して可能であれば、下記の事項も考察すること

市場のsegmentation、すなわち、対象顧客のタイプ別分類に関して、「自然」的分類(客観的分類)と「企業戦略」的分類(対象顧客の意図的選択)という視点から考察するとともに、対象顧客のneedsをより満足させるためにどのようなproduct innovationを遂行したのか?あるいは遂行しようとしているのかを論じること
 
レベル3.製品購入=需要demandというレベルにおけるneeds視点-顧客(ユーザー)の製品購入を規定している要因は何か?
  1. 当該イノベーションによって生み出されたProduct(製品、サービス、システムなど)に対するMarket needsすなわちdemandは数値的にどのようなものであるのか?
  2. 当該製品分野において、新世代製品の普及率や販売数量はどのようなものなのか?その年次推移はどうなっているか?
  3. 製品の販売価格は?
  4. どの製品がどの程度、実際に売れているのか?
  5. 顧客(ユーザー)が複数の購入候補製品の中から、ある特定の製品を購入した理由は何なのか?ー製品の価格なのか?、製品の機能なのか?重視する機能に関する製品の性能なのか?総合的なコストパフォーマンスなのか?
 
4.どのようなseedsを利用したイノベーションなのか?
イノベーションに用いられたseedsに関して下記のような分析をおこなうこと

  1. イノベーションに取り組む以前から既に存在していたseedsは何か?(既存seeds問題に関する分析)
  2. イノベーションに取り組むことが決定された後に、新規開発されたseedsは何か?(新規開発seeds問題に関する分析)

なお個別企業におけるイノベーションを取り扱う場合には、下記のような形で分析をおこない、当該企業と競合企業の間での相対的競争優位のあり方を分析すること

  1. 当該企業はイノベーションに取り組む以前からどのような技術的resourceを現に有していたのか?
  2. 当該企業はイノベーションに取り組むことを決定した後に、どのような技術的resourceの新規開発をおこなったのか?
  3. 競合企業は当該企業がイノベーションに取り組む以前からどのような技術的resourceを現に有していたのか?
  4. 競合企業は当該企業がイノベーションに取り組むことを決定した後、あるいは、イノベーションをおこなった後に、どのような技術的resourceの新規開発をおこなったのか?